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【報告】小池知事に「関東大震災における朝鮮人虐殺」についての要望書を提出

 本日、小池都知事に対して「関東大震災における朝鮮人虐殺」についての要望書を提出しました。担当の建設局公園緑地部の管理課長に渡しました。式典の担当が公園緑地部とのことなのですが、要望の内容に沿って、知事の他、人権担当の総務部にも送ってくださるそうです。

 


2021年8月30日

東京都都知事 小池百合子 様

                     東京都議会「グリーンな東京」
                            幹事長 漢人あきこ

 

「関東大震災における朝鮮人虐殺」についての要望書


  今年も9月1日を迎えようとしています。9月1日は関東大震災が起きた日であり、それを後世へと語り継ぐ日です。
 1974年以降、歴代の東京都知事は、毎年9月1日に東京都墨田区の都立横網町公園で開かれる関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典へ「追悼文」を寄せてきましたが、小池知事は就任翌年の2017年以降、送付を取りやめています。
 そして、今年も7月27日の追悼式典実行委員会からの式典への追悼文を送るようにとの小池知事への要請に対し、担当職員は「要請の趣旨は知事と関係部署に伝える」としましたが、その後、武市敬副知事は「今年も追悼文を送付しない」ことを表明したとされています。

 1923年、関東大震災において朝鮮人の虐殺行為があったことは、さまざまな記録、証言、調査によって、すでに明らかです。

「朝鮮人を1人つかまえたといって[上野の]音楽学校のそばにあった交番のあたりで、男たちは、手に手に棒切れをつかんで、その朝鮮の男を叩き殺したのです。わたしはわけがわからないうえ恐怖でふるえながら、それを見ていました。小柄なその朝鮮人はすぐにぐったりしました」(女優・清川虹子『恋して泣いて芝居して』主婦の友社、1983年)

「朝鮮人はみなひきずり降ろされた。そして、直ちに白刃と銃剣下に次々と倒れていった。日本人避難民のなかからは嵐のように沸きおこる万歳歓呼の声―国賊!朝鮮人は皆殺しにしろ!僕たち連隊はこれを劈頭の血祭りにし、その日の夕方から夜にかけて本格的な朝鮮人狩りをやりだした。」(越中谷利一「関東大震災の思い出」)
  
 内閣府中央防災会議の報告書(2008年)は調査結果として虐殺の事実を確認しています。
歴代都知事、そして小池知事も2016年には「多くの在日朝鮮人の方々が、言われのない被害を受け、犠牲になられたという事件は、わが国の歴史の中でもまれに見る、誠に痛ましい出来事」などとする文を主催者に送っています。

 小池知事が、追悼文の送付をやめたのは、この認識に変化があったからなのでしょうか。

 内閣府中央防災会議の報告書では、虐殺の背景に「民族的な差別意識」などがあったとしています。このことは重大な指摘です。朝鮮人の犠牲は、自然災害による犠牲と一般化できるものではありません。
 小池知事が追悼文を送ることをやめた2017年以降、「追悼式典」に隣接した場所で行われるようになった集会では、朝鮮人を貶め、傷つける差別的な演説がされるようになりました。その言動は、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」が設置する審査会は昨年ヘイトスピーチにあたると認定しました。
 関東大震災における朝鮮人虐殺の背景には、朝鮮人に対する民族的差別と偏見があったことは明らかであり、それから100年近くたった今も、公然と日本人によるヘイトスピーチがされていることを東京都は深刻に受け止めるべきです。追悼文送付を取りやめたことが、差別意識を助長したことも明らかです。歴史的事実を覆い隠し背を向けていては、多民族共生の道は拓けていきません。
2016年には「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)が施行されました。そこでは、国に対して、相談体制の整備、人権教育の充実、啓発活動の実施などを定め、地方公共団体に対しては、国との役割分担を踏まえながら、実情に応じた施策を実施することを定めています。都知事の追悼文の送付の取りやめは、「ヘイトスピーチ解消法」にも背くといえます。

 関東大震災における朝鮮人虐殺は東京において多くの事実が確認、証言されています。その歴史的事実に向き合い、掘り起こし、語り継ぐことが、いまの時代を生きる人たちへの啓発、人権教育となります。

 98回目の9月1日を迎えるにあたって、以下のことを強く要望します。

 

1.東京都知事は、9月1日「関東大震災における朝鮮人犠牲者」への追悼の意を表明すること

2.都立横網町公園(墨田区)で行われる「追悼式典」への「追悼文」を送付すること

3.東京都は、「関東大震災における朝鮮人虐殺」について、学校教育や社会教育の場などにおいて、啓発と人権教育を推進すること