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【委員会報告】「環境局」事務事業質疑 ―10/31環境・建設委員会

 都議会では毎年秋、決算特別委員会による前年度の決算審査と、常任委員会での事務事業質疑(各局所管事業全般についての質疑)を行っています。
 環境・建設委員会の事務事業質疑から、漢人の質問概要を報告します。
 まずは、10/31の「環境局」から

録画はこちら(漢人は4:16:43から)
https://nws.stage.ac/metro-tokyo-stream/arcplayer.html?list=C01_7&id=1&lecno=7

【1】気候危機対策
【2】生物多様性地域戦略
【3】神宮外苑再開発事業
【4】産業廃棄物処理施設

*以下、質問原稿と答弁骨子です。実際の質問・答弁については録画をご覧ください。最後の産廃施設に関してた、異例の「質問殿部長からの発言」がありましたので、その部分は録画から文字起こしをしました。
(会議録検索アップまでには半年ほどかかります➡https://www.record.gikai.metro.tokyo.lg.jp/

【1】気候危機対策
  2016年以後の8年間の小池都政の気候危機対策を問う

 小池都政は、2015年のバリ協定の翌年2016年にスタートし、8年が経過しました。 2019年には「ゼロエミッション東京戦略」を策定し気候危機対策を強化してきました。
 この間の気候危機対策の成果を検証したいと思います。

1.エネルギー消費量について

 2016年から2022年までの6年間のエネルギー消費量は、612PJから573PJへ39PJ削減しています。このペースのままで削減されるとすると、2030年には約520PJに留まると予測されます。2000年が802PJなので、その半分の401PJには削減量が約100PJも不足し、2000年比で30%削減にしかなりません。

Q1 さらなる省エネルギー対策の強化が必要と思いますが、検討していますか。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、2022年9月に新たな環境基本計画を策定し、業務、家庭、運輸など、それぞれの主体が果たすべき役割と責任を一層明確化するため、2030年カーボンハーフに向けた部門別のエネルギー消費量削減の目標水準を明示
〇また、その実現に向け、来年度から施行する新たな条例制度をはじめ各種施策の拡充を図っており、着実に対策を推進

コメント 来年度からの新たな取り組みには期待しますが、それで十分との認識は甘いのではないでしょうか。例えば、データセンターの電力消費拡大問題は重大だと考えます。

2.データセンターのエネルギー消費量の拡大と抑制策について

 今後のエネルギー消費の拡大要因としては、人口増・世帯数増があると思いますが、さらにデータセンターの電力消費量も拡大すると見込まれています。
 政府は2030年までにデータセンターの電力消費量は2019年比で70~130 TWh増加すると推計しています。その電力消費量は、現在の約900 TWhの8~14%にも相当しますから、データセンターの電力消費量の抑制は極めて重要な課題です。
 政府の見通しでも、今後2030年までに計画されている東京都内のデータセンターは、現時点でも12か所あります。これらの電力消費量の総計は90億kWh、エネルギー消費量32.4PJと予測されています。

Q2 今のペースでもエネルギー消費量は100PJほど削減量不足となりかねないことは先ほど述べました。さらに32PJも増加すると、2000年比50%削減目標の実現が、さらに厳しくなると想定されます。
 データセンターのエネルギー消費量を抑制する対策が必要ではないでしょうか。伺います。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、環境確保条例に基づく、地域における脱炭素化に関する計画制度、建築物環境計画書制度、キャップ&トレード制度を大幅に強化し、順次開始

コメント データセンターの電力消費の増加対策の必要性の認識がない、と言うことなんでしょうか。

Q3 現在の全国のデータセンターの平均PUE値は、1.7と言われていて、昭島GLPは1.4と想定されています。ドイツでは1.2を義務化していますが、このような対策が必要ではないでしょうか。国に対してPUE値の義務化を求めませんか。また、先行して、都としてPUE値の義務化の条例を検討しませんか。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、環境確保条例に基づく、地域における脱炭素化に関する計画制度、建築物環境計画書制度、キャップ&トレード制度を大幅に強化し、順次開始

コメント 「国へのPUE値の義務化の提案」はしないという答弁だと理解します。データセンターの電力消費増加を放置すれば、2030年のエネルギー消費の半減は確実に実現できないと危惧します。

Q4 その象徴のようなデータセンター計画が進行しています。この委員会にも陳情が提出され、 継続審査となっている「GLP昭島プロジェクト」です。都内最大、全国でも最大規模のデータセンターです。この「GLP昭島プロジェクト」のデータセンターにおける年間の電力消費量は何MWhと想定されていますか。そして、それはエネルギー消費量にして何PJですか。

➡政策調整担当部長
〇電力消費量は、最大値として、年間約363万Mwhと予測、ジュールに換算すると、約13PJ

Q5 10/21の環境影響評価審議会で、「GLP昭島プロジェクト」環境影響評価書案が答申されました。審議会では13の項目別事項について意見を付していますが、「温室効果ガス」については「生物・生態系」に次いで多くを割いて次の点などを指摘しています。
・将来の脱炭素化の推進に向けた方針を定め、最大限の再生可能エネルギーの導入に努めること
・再エネの使用について、テナントに働きかけていくこと
・事後調査において、再エネ使用量も含めた施設の消費電力量について詳細に報告すること
・排出される温室効果ガスの排出量が膨大であることから、より一層の温室効果ガス削減が求められる
・データセンターでは、PUE1.4を目標値としているが、可能な限り低い値となるよう努めること
・最大限の省エネルギー化をテナントに働きかけていくこと

 知事は10/23に、答申と同内容の環境影響評価書案審査意見書を提出しました。ゼロエミッション東京を進める小池知事は、再エネ100%、データセンターの電力使用効率を示す指標であるPUEを1.2とするなど、6年後の2030カーボンハーフ実現のために求められる具体的な目標数値を含む意見書とするべきだったと思いますが、審査意見書になぜ目標数値を入れなかったのですか。

➡政策調整担当部長
〇審議会における調査審議を経て出された答申を踏まえ、作成

コメント 審議会の答申を尊重することは当然ですが、ゼロエミッション東京を掲げ2030年のエネルギー消費の半減をめざしている都として、その確実な実現にむけて目標数値を入れるべきでした。

Q6 2024年6月の国への提案に「データセンターなどの電力多消費産業に対応した供給構造の変化に対して、速やかに対策を講じること」と記載されています。「供給構造の変化に対して、速やかに対策を講じること」とは何を意味しているのでしょうか。エネルギー電力消費の抑制ではなく、電力供給の拡大を求めているのですか。

➡気候変動対策部長答弁
〇本提案要求は、需要シフトを通じて電力の安定供給に貢献するなど、エネルギー需給の安定化に向けた対応を要望するもの

コメント 「需要シフトを通じて電力の安定供給に貢献する」の意味が分かりませんが、需要拡大に対応できるように「電力供給の拡大」を求めていると理解してよいですか。
 来年度の国提案では、 「PUE値の義務化」をぜひ提案するべきだと求めておきます。データセンターの電力消費増加を放置すれば、2030年のエネルギー消費の半減は確実に実現できないと危惧します。

3.温室効果ガスの削減について

 東京都の温室効果ガスの排出量は、2016年は6435万トン、2022年は5945万トンですから、6年で490万トンの削減です。このペースのままで削減が進むと2030年には5292万トンとなります。2000年が6220万トンなので、その半分の3110万トンにするには、削減量が2180万トンも不足します。約15%削減にしかなりません。
 「ゼロエミッション東京戦略」策定後も大きな改善はなく、2030年のカーボンハーフの達成は厳しいままです。

Q7 2019年以降に様々な対策が取られていますが、その効果が出るのは、これからです。しかし、2~3年後の結果によって不十分なことが明らかになってから、さらなる対策強化を行っても、2030年のカーボンハーフには間に合いません。さらなる対策の抜本的強化が必要と思いますが、いかがですか。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、2030年カーボンハーフの実現に向け、来年度から施行する太陽光パネルの設置義務化やキャップ・アンド・トレード制度の強化など条例制度をはじめ、各種施策を拡充

コメント ですから、そのような対策の効果を否定しているわけではありませんが、十分ではないと思うから対策強化を求めています。

Q8 ドイツでは、すべての新築に対して原則として太陽光発電が義務付けられています。
 来年度実施となる再エネ拡大策としての新築住宅の太陽光発電の義務化について、新築に占める太陽光発電設備容量の義務化の比率のアップ、さらには対象事業者の拡大などを進めるなどの対策強化の検討を始めるべきだと思いますが、いかがですか。

➡気候変動対策部長答弁
〇家庭部門におけるCО2削減等を推進するため、令和4年12月に条例改正を行い、建築物環境報告書制度を創設
〇施行となる令和7年4月から本制度を着実に運用

4.EV(ZEV)の新車販売比率の拡大について

 電気自動車を含むゼロエミッションビーグルZEVの新車販売台数は、全国の乗用車の新車販売台数に占めるZEVの割合は、2018(平成30)年度の1.6%から、2022(令和4)年度は3.2%へ増加し、都では、2018年度の1.6%から、2022年度は5.7%へと3.1%増加しています。このままのペースで推移したとしても、2022年からの8年後の2030年のZEV販売比率は12%にしかならない、ということです。

Q9 ZEV化はCO2削減にとって重要な課題ですが、現状は3%と低く、新車販売台数のZEV比率の増加が見込めない状況です。2030年ZEV新車販売50%の実現のためには、現状の対策では不十分と思われます。さらなる対策の強化は検討していますか。

➡気候変動対策部長答弁
〇ZEVの普及拡大にあたっては、令和5年度から、販売実績の高い自動車メーカーから購入する場合、助成額を上乗せ
〇また、集合住宅の充電設備の設置に向け、令和5年度より管理組合の検討段階や導入段階、運用段階に応じた様々な支援策を行っており、ZEVの普及促進に繋がる施策を実施

Q10 EUでも新車販売のEV比率は鈍化していますが、イギリスでは20%と高い比率を維持しています。その理由として、イギリスでは、新車販売のEV販売額比率を法的に義務付け、少しずつ引き上げているからだと評価されています。罰則として1台当たり300万円とのことです。
 日本でも、補助金だけでなく何らかの義務化が必要だと思いますが、国へ提案してはいかがでしょうか。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、購入時の補助の拡充のほか、新たな優遇制度の創設や規制的手法の導入など、より積極的な政策展開を行うことを国に提案

コメント 「規制的手法の導入」を提案していることは歓迎します。日本の気候対策は補助金による誘導が中心で、EUのような義務化・規制強化の対策が極めて不十分です。
 つい最近公表された国連環境計画の「排出量ギャップ2024」では、現状の対策では2100年に最大3.1℃まで上昇すると予測されています。また、NDC=温室効果ガスの排出量削減目標の「適格性」を評価する分析で、複数の独立研究機関の調査報告書を比較する形での評価をしていますが、日本は3つの機関ともに「目標達成できない」としています。
 対策の強化が必要だと指摘されているわけです。東京都の対策強化を改めて求めます。

 温室効果ガスの削減について、最後にもう一点、指摘しておきたいことがあります。
 国際金融市場のグリーン度を評価する「Global Green Finance Index(GGFI 14)」が24日、公表されました。世界の金融市場でのグリーンファイナンスの普及状況を半年ごとに評価しているものです。「東京は前回、一気に7ランク下落し、過去最低の41位だったが、今回はさらに一つ下げて42位。東京・外苑再開発問題で「グリーン軽視」の都行政と、開発業者主導の街づくりが金融市場から嫌われ続けている状況だ」と報告されています。
 都は「サスティナブルファイナンスの推進」を打ち出していますが、国際的な評価では遅れているということです。

5.エネルギー貧困(気候変動適応計画)について

 今年の夏6月~9月の都内の熱中症死亡者は、監察医務院の速報値によると、23区では262人です。多摩島しょ地域については、「監察医」を置くべき地域に定められていないことから、把握に時間がかかるため、まだ実績が公表されていないとのことです。多摩島しょ地域の熱中症死亡者は、一昨年は87人、昨年は63人ですから、今年の夏の熱中症志望者は多摩島しょ地域を含む東京都全体では300人は確実に超えることになると思われます。

Q11 昨年の夏の熱中症死亡者の8割は室内でエアコン不使用状態で亡くなっています。生活保護問題対策全国会9/13/13に「2025年度の生活保護基準額改定にあたって大幅な増額と夏季加算創設等を求める要望書」を厚労省へ提出しました。夏季加算の要望は初めてとのことです。
 しかし、気候変動適応計画の熱中症対策にはエネルギー貧困世帯への支援が記載されていません。気候危機の進行により、今後とも、夏の暑さの過酷化は必至であり、環境局として、福祉局との連携を一層強化して、政府への提案も含めたエネルギー貧困対策に取り組むべきと思うがいかがですか。

➡建築物担当部長
〇熱中症対策の推進については、高齢者など特に暑さへの配慮が必要な方への対策について福祉局と連携して区市町村等にも周知するなど、全庁的な推進体制の下、様々な取組を推進

コメント 来年度は国への提案で「夏季加算」を求めることを、環境局から働きかけていただくことを求めて、次の質問に移ります。

【2】生物多様性地域戦略アクションプラン

 国連の生物多様性条約締約国会議(COP16)が、コロンビアのカリで10/21から開催されていて、明日11/1が最終日です。2022年のCOP15で、陸や海などの30%以上を保全する30by30などが盛り込まれた2030年までに生物多様性の損失を止めて回復させるネイチャーポジティブを掲げた国際目標が採択されていますが、今回のCOPは各国の取り組みなどの評価方法が焦点となっています。

 東京都の生物多様性地域戦略とそれに基づくアクションプランが昨年策定され、アクションプランは、今年、初めての更新が行われたわけですが、この「評価方法」が課題であることを、指摘したいと思います。

Q1 6/21の自然環境保全審議会計画部会では報告事項として「アクションプラン」が議題となっていますが、審議時間はたった30分程のようです。アクションプラン更新にむけた庁内推進会議はどのような手続きをしてきたのか。また、事業の推進に向けて、区市町村所管部署との連携、多様な主体との連携など、地域戦略の進行管理で掲載されている手続きはどのように進められたのか伺います。

➡自然環境部長答弁
○アクションプランの更新に向けては、昨年9月及び本年4月に庁内推進会議を開催
○また、地域戦略の推進にあたっては、生態系の保全・回復や外来種対策など、プランに掲げた施策ごとに、区市町村をはじめ多様な主体と、日頃から意思疎通、連携を図りながら事業を推進

Q2 審議会では「今回は初めての更新版のため、部会からの助言を受けて必要な修正を行い公表する予定」と説明していますが、修正はあったのでしょうか。あれば、その概要を伺います。

➡自然環境部長答弁
〇本年6月の審議会 計画部会では、プラン案の修正に関する意見なし

Q3 アクションプランの「はじめに」に、「新たな取組を盛り込むとともに、取組を強化」と書かれています。新規事業は19と思われますが、強化した取組はどのようなものがあるのか伺います。

➡自然環境部長答弁
〇例えば「保全地域における生物多様性に配慮した保全・管理」では、新たに、樹木の老木化、樹勢が弱った樹林を若い樹林に再生させる取組を開始したほか、希少種保全対策や外来種対策を強化
〇また、「ニホンジカの個体数管理及び被害防除」では、これまで実施してきた雲取山及び高尾山一帯で取り組んできた指定管理鳥獣捕獲等事業を、今年度から檜原稜線部でも実施

Q4 アクションプランには、前年度の実績と当年と翌年の計画が掲載されていますが、この記載のない事業が多くあります。19の新規事業についても、「実績・計画」の記載があるのは3事業のみです。地域戦略はPDCAサイクルで進めるとうたっていますが、「実績・計画」の記載のない状態で、C=チェックはどのように行うのでしょうか。
Q5 特に、新規事業の内、環境局所管の事業が5つりますが、いずれも「実績・計画」がありません。なぜですか。

➡自然環境部長答弁
〇アクションプランは、毎年度、事業の進捗等を審議会の計画部会に報告して意見を聴取
〇それぞれの事業の性質に応じて記載内容を判断

コメント ちょっと意味の分からない答弁です。審議会に報告して意見を聞く際に「実績・計画の情報がなければ審議会委員も判断の基準がないわけですし、「実績・計画」の記載が不要な事業というのは少ないと思います。少なくても、今回の環境局所管の5つの新規事業が記載の必要がない事業とは思えません。
 来年度の更新に向けて、「実績・計画」を記載することを基本とするよう求めます。

Q6 新規事業の指標として「生物多様性に配慮貢献する行動をしている都民割合」が挙げられ、現状として93.7%という数値が掲載されています。この現状数値については審議会でも質問を受けて回答されています。これは調査会社を通して行ったアンケート調査で測定したとのことです。どんなアンケート項目でどんな結果だったのかは非公表とのことです。「生物多様性に配慮貢献する行動をしている都民割合」が既に93.7%というのはうれしいことのようですけど、現状は違うのではないでしょうか。私はこのアンケートとそこから導かれたという93.7%という数値はアクションプランの指標を示すための現状把握としてはふさわしくないと思いますが、いかがですか。

➡自然環境部長答弁
〇生物多様性の保全と持続可能な利用を進めるには、全ての都民が生物多様性に配慮・貢献した行動に移すことが不可欠であることから、都は、アンケート調査により、保全活動や消費行動などに関する都民の行動を把握

コメント 93.7%の都民がしているという「生物多様性に配慮貢献する行動」ってどんなことなんでしょうか。例えば30%の現状から100%をめざす取り組みと、すでに93.7%達成されている現状からわずか6.3%を上乗せするプランでは内容が全く違います。
 私はこの指標は絶対に間違っていると思います。指標の再設定を強く求めます。

Q7 次にプランの一番最初にあげられている「多摩の森林再生」について伺います。間伐面積の2023年度実441haと記載されていますが、昨年の2023年のアクションプランの2023年度の計画では、625haでした。つまり、計画の7割しか達成できていないということになりますが、この達成状況は2023年プランを見て比較しなければわかりません。前年度について実績だけでなく、計画の達成割合を掲載するべきではありませんか。

➡自然環境部長答弁
〇アクションプランでは、地域戦略の2030年目標の実現に向けて、各施策の前年度の実績と今年度、次年度の取組を一覧して把握できるように整理

コメント だから、それだけでは、実際の事業の進捗状況を正しく把握できません。
前年度計画の達成状況を掲載することは、アクションプランの実効性を高めるために必須です。

Q8 審議会では、この森林再生事業について「目標に対して、各指標とも着実に実績を積み上げているところ」と説明していますが、先ほど指摘したように初年度の計画に対して実績の達成状況は7割です。事実と異なる説明ではないですか。

➡自然環境部長答弁
〇対象地域9,000haに対し、昨年度末までの実績が約8,100haと実績を積み重ね

コメント 積み重ねた実績を否定はしませんが、単年度での計画が達成できなかったことは明確にするべきです。現状の把握の仕方によって計画・対策は異なります。

Q9 2023年プランの2023年度計画が実現できなかった事業は他にもありますか。

➡自然環境部長答弁
〇事業を執行する中では、外部環境の変化や、土地所有者などの相手方の事情、労務費や資材価格の高騰による契約不調など、様々な事情により、事業が計画通りに進まないケースあり

コメント 最初に述べたように、COP16でも「評価方法」が課題になっているようです。この結果も参考に、アクションプランの進捗状況を把握し表すために「実績・計画」の各項目への掲載、適切な指標の設定を求めて、この質問を終わります。

【3】神宮外苑再開発事業 環境影響評価審議会について

 10/21の環境影響評価審議会において、「(仮)神宮外苑地区市街地再開発事業」 の変更届の受理報告が行われ、都は「環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるとは認められない」として、再審査は行われませんでした。
 これを受けて、10/23、日本イコモス国内委員会が、小池知事あてに「(仮)神宮外苑地区市街地再開発事業」の変更届の受理・公示に関し、 東京都環境影響評価条例第63条に基づく、民主的手続き履行の要請」を提出しました。
 イコモスは、11項目にわたって、環境に重大な影響を与える開発行為に対して十分な資料の提出が行われず、審議が公明正大に尽くされていないとして、変更案の環境影響評価書案の公示・縦覧・意見書・公聴会を行い、事業者に、既に完了している手続の全部又は一部を再度実施するよう求めています。
 イコモス指摘の11項目は、イチョウの衰退、新設野球場の地下杭、保存緑地の日影の評価、芝生広場、霞ヶ丘門の保全、スダジイ、秩父の宮ラグビー場の18本のイチョウ、歩道橋を囲む広場、文化的景観の破壊などです。

Q1 イコモスの指摘・要請への見解を伺います。

➡政策調整担当部長 答弁
・今回の変更届は、新ラグビー場棟の設計変更に伴って提出されたもの
・ラグビー場棟北東部分がセットバックされたことにより、伐採樹木や日影の範囲が減少
・いずれの評価項目においても、改善・低減等が見込まれる
・今回の変更が環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるとは認められず
・専門家からなる審議会においても適切であったと確認

Q2 都環境影響評価条例第63条に基づく再審査が行われた事例があればお示しください

➡政策調整担当部長 答弁
・環状2号線建設事業、虎ノ門ヒルズ再開発等事業、豊洲新市場建設事業
・一つ目は、地下方式での建設を予定していたところ、地上での平面構造に変更することとしたため
・二つ目は、建築物は四棟の建設を予定していたところ、三棟に変更したことなどにより、構造に大幅な変更が生じたため
・三つ目は、土壌汚染対策工事等の大幅な変更が生じたため

コメント 環境影響評価条例ができてから3回しか再審査が行われた例がないということがわかりました。いずれも事業の形態が、相当に大きく変わるものだということでした。
 神宮外苑再開発に関しては、そういった大幅な事業変更というよりは、先ほどのグリーンファイナンスのこともありますけれども、ある意味新しい時代の求めによる、世界的に今どういうまちが求められているのかということ自体が問われている状況です。都市における樹木の保存や、文化的景観のあり方などが問われるのにそれに対応できないということは、環境影響評価条例自体を見直さなければならない、時代に合った審査ができない状況になっていると思います。 条例に則った正しいことでも、時代に合わなくなっているということで、条例改正を含めて、見直しをするべきだと思います。
 今の状況は都民の理解・共感を得られておらず、まちのあり方、特に東京都心の緑地のあり方が大きく問われる状況だと思いますので、伐採についても慎重であるべきですし、計画の見直しを何らかのかたちで求めていきたいと思っています。

【4】産業廃棄物処理施設周辺の重金属汚染について

 武蔵村山市伊奈平の比留間運送という事業者が運営する産業廃棄物処理施設について、その排ガス等による周辺環境の汚染と、それによる被害がこの間、繰り返し問題になり、武蔵村山市議会でもたびたび取り上げられてきました。この問題で、今年6月に示された東京農工大学環境毒性学研究室の調査結果では、施設周辺の側溝汚泥から亜鉛、カドミウム、鉛などの重金属が高濃度で検出されています。
 こうした事態を踏まえて質問します。

 当該施設の周囲は、工場や事業所が集積した地域ではありますが、そこには当然、多くの労働者が通い、働いています。また、施設の南西、直線距離で100mほどのところには大型スーパーがあり、西側や南側に200~300m離れれば住宅地が広がるエリアとなっています。
 当該施設は焼却処理や破砕処理など産業廃棄物の中間処理を行う施設であり、施設の性格上も近隣の環境や住民・労働者の健康への負荷については、最大限の配慮、注意義務が求められるものです。
 しかし、この間、長きにわたって当該施設の維持管理、とくに焼却管理についてはたびたび問題点が指摘され、排ガスにより建物等が汚染された、さらには健康被害が生じているとの切実な声が私のもとにも届いています。

Q1 都はそのような実態を把握していますか。把握していれば、どのように対応しているか伺います。

➡環境改善部長 答弁
〇都は、周辺住民等から相談があった場合は、必要に応じて、法令に基づく立入検査や指導を実施
〇公害に係る民事上の争いについて、弁護士や専門家が公正・中立な立場で、あっせん、調停、仲裁を行う都の公害紛争処理制度を相談者に対し案内

Q2 2014(平成26)年度に当該施設の排ガス中ダイオキシン濃度が規制基準10ナノグラムを超えたと聞いています。規制基準を超えた内容とそれに対する指導、改善の経緯を伺います。

➡環境改善部長 答弁
〇地元自治体が実施した排ガス中のダイオキシン濃度測定により規制基準の超過が一度確認されたが、事業者が調査・改善を行った結果、基準値の範囲内に収まり、以降、基準を超過したことはないと聞いている

Q3 焼却炉の停止による改善工事等が度々行われていると聞いています。都はその改善工事等の実態を把握していますか。過去から現在までの事故及び不具合、故障等の状況とそれに対する修理等の実態について伺います。

➡資源循環推進部長 答弁
〇届出の要件に該当する改善工事や修理等の状況については把握。定期的な立入検査時に施設の状況等を確認

コメント 同施設の排ガス中ダイオキシンは、この年以外にも基準をこそ越えなかったものの一貫して数ナノグラムという高い濃度が確認されています。しかも24時間連続焼却ではなく8時間稼働の炉であり、頻繁に繰り返される立ち上げ・立ち下げ時のダイオキシン排出はこの値を大きく上回っている可能性を否定できません。加えて、当該施設の煙突は高さが15mしかなく、排ガスは拡散希釈されないままに、限られた範囲に降り注いでいることを考えれば、当該施設周辺の住民、労働者の健康リスクはダイオキシンだけでも重大なものがあるのではないかと心配です。

Q4 周囲にたくさんの住民が暮らし働いているような空間で、これだけのダイオキシン汚染を結果的に放置してきた可能性があることについて、どう考えますか。

➡資源循環推進部長 答弁
〇施設維持管理基準に基づき、ダイオキシン類が発生する 800℃以下では、廃棄物を投入しない焼却炉の運転管理が行われていることを、都は、立入時に炉内温度の記録データから確認
〇法令に基づく報告により、排ガス中のダイオキシン類濃度が、排出基準に適合していることを定期的に確認
〇以上から、ご指摘は当たらない。

コメント そもそも、廃棄物焼却施設の排ガス中ダイオキシンの規制基準は、新設の大型炉であれば0.1ナノグラムであり、実績ベースでいえば、例えば23区一部事務組合の清掃工場では1ナノグラムの1000万分の1程度というきわめてわずかな値に抑えられています。

Q5 なぜ基準が100倍も緩いのでしょうか。日常的に数ナノグラムのダイオキシンを含む排ガスを出し続けることが許される規制の在り方こそ、見直すべきと思いますが、見解を伺います。

➡環境改善部長 答弁
〇ダイオキシン類の大気排出基準は、法令に基づき施設の規模や新設・既設の別により国が設定

コメント もともとダイオキシン対策特別措置法が2000(平成12)年に制定される過程の中で、既設の焼却処理施設などについては基準を緩和する措置が取られたことに端を発するものです。特措法の制定からすでに25年です。いまだにその緩和された基準すら満たさない事態が起きていることの異様さをしっかり省みるべきです。 

Q6 問題はダイオキシンだけではありません。該施設の排ガス等が原因と疑われる環境・健康被害については、武蔵村山市議会でも何度か取り上げられています。昨年9月には、東京農工大学環境毒性学研究室による雨水及び屋根屋上に堆積した泥状採取物の分析によって、高濃度の重金属汚染が確認されたことが指摘され、市は「都と連携して対処する」と答弁しています。具体的な対処方について市から相談、協議などはあったのか伺います。

➡環境改善技術担当部長 答弁
〇地元自治体と都で情報共有し、それぞれが所管する法令や条例に基づく立入検査や指導を実施するなど適切に対応

 今年2月、新たに、施設西側に接する道路の側溝中の泥から採取した13検体と樹木の葉部分3検体の分析が東京農工大学環境毒性学研究室によって行われ、その結果が6月に発表されました。検体に含まれる微量元素成分を抽出、その汚染の程度を濃縮係数 Enrichment Factor(EF値)として算出したところ、泥からは、銅、亜鉛、カドミウム、鉛などの「非常に強い汚染」が確認された、と報告されています。

4問まとめて質問します。
Q7 まず、これらの重金属類の有害性、有毒性についての知見を伺います。
Q8 また、この調査結果を把握していますか。国や都の環境基準における汚染状況評価とは異なる指標を用いたものではありますが、権威と実績のある大学研究機関の調査であり、客観的・科学的な手法、評価に基づいたものとして評価できると考えますが、いかがですか。
Q9 今回の調査では汚染の原因を直ちに特定するものではありませんが、採取された検体はいずれも施設至近の側溝で採取されたもので、当該施設からの排ガス、排水等による汚染である可能性を示唆するものと思いますが、いかがですか。
Q10 最後に、今後、当該施設の排ガス・排水等の管理状況の詳細、広域的な汚染の広がりの把握と当該施設も含めた汚染源の特定、周辺に住み働く人たちへの健康影響などを確認するための調査を、都として行うべきではありませんか。

➡環境改善技術担当部長 答弁
A7 環境基準等が設定されている重金属のカドミウムや鉛は、一定量以上摂取すると健康への影響の可能性
A8 当該大学が実施した調査は、法令に準拠したものではなく有害性等は評価できない
A9 当該大学が実施した調査は、法令に準拠したものではなく評価できない
➡環境改善部長 答弁
A10 法令に基づき必要な調査を適切に実施

再質問 農工大調査について、「法令に準拠したものではなく評価できない」との答弁ですが、農工大・環境毒性学研究室が行った検査は、非汚染土譲との比較対象において土壌の汚染の程度を定量化しようとするものです。日本の法令基準にもとづく測定、検査とは異なった手法ではありますが、その手法自体は科学的な根拠に基づき、汚染の程度を表現する方法として国際的にも広く認知され採用されているものと聞いています。
 法令に準拠したものではなくても、評価はできるし、しなければならないのではないでしょうか。

コメント 今回の調査では、検体はごく少量ですし、採取箇所も少ないので、汚染の深さと広がりの全体を推定するという点では限界はあるかもしれません。しかし、調査の結果、確認された重金属汚染が、その濃度という点で通常の土壌ではまず起こりえない程度のものであることも疑いないようです。こういう場合には、より本格的で系統的な調査の実現のために都として努力することこそが求められているのではないでしょうか。

Q11 排ガス中の重金属類について法令・条例で定められている規制があれば、その概要をお示しください。

➡環境改善部長 答弁
〇廃棄物焼却施設に係る排ガス中の重金属類については、大気汚染防止法において水銀及びその化合物が規制対象となっており、事業者による定期的な測定等を義務付け
〇環境確保条例において、クロム化合物、カドミウム及びその化合物並びに鉛及びその化合物について、排出基準を設定

Q12 最後に、当該施設では、水銀汚染の原因となる蛍光管やPCBを含む変圧器なども処理していますか。それらが適正に処理されていることを検査、確認した経緯はありますか。お伺いします。

➡資源循環推進部長 答弁
〇水銀を含有した蛍光管は、破砕処理の許可を有しており、許可申請手続き及び現場立入検査において、法令に基づき適正に処理をされていることを確認
〇PCBを含む変圧器について許可を受けておらず、処理は行っていない

コメント カドミウムや鉛を除けば、そもそも環境規制基準がありません。金属製品だけでなく、プラスチックにもさまざまな重金属類が含まれていることは広く知られています。
 多様な廃棄物を処理する産業廃棄物処理施設が、もし不適切に管理・運営されていたとすれば、排ガス、排水等を介して近隣の環境を汚染するリスクは小さくありません。
 今回、周辺での汚染が確認された施設については、今日の質疑でもその一端が明らかになったように、工場の管理運営上、都の指導を受けるような事態が繰り返されてきています。
 当該施設の稼働との因果関係の有無を確認することも含め、積極的に調査に入ることが、住民や労働者の健康を守るべき都としての責務だと申し上げて、質問を終わります。

★以降、録画より文字起こし
発言申出 総務部長
*質問終了後の部局からの発言は異例のため、委員長の発言許可の前に、部長の発言後に漢人からも発言することを確認しました。
 特定の事業者が公害原因であるかのようなご指摘をされておりまして、風評被害につながりかねませんので、あらためてご答弁をさせていただきます。
 先ほどから答弁をさせていただいているように、都は必要に応じて、法令に基づく立ち入り検査を実施して、違反のないことを確認しております。
 また、ダイオキシンの拡散の話もございましたけれども、繰り返しになりますが、ダイオキシン類の発生する800℃以下での廃棄物を投入しない焼却炉の運転管理が行われているということも確認しています。
 また、排ガス中のダイオキシン類の濃度が排出基準に適応していないということも定期的に確認しており、ダイオキシン類が基準値を超えて排出されているという状況ではございません。
 さらに、農工大でございますけれども、法令に準拠したものではなく、評価ができず、重金属等で非常に強い汚染が確認されたというお話ではございますが、当該事業者との因果関係も明らかになっていません。
 そうしたなかで、委員のもとに健康被害が生じているという声が届いているのであれば、都には公害に関わる民事上の争いがあった場合に、公害紛争処理法に基づき、弁護士や専門家が公正中立な立場で、斡旋・調停・仲裁を行うことができる制度がございます。
 まずは当該制度を使っていただいて、解決を図っていく必要があるものと認識しております。

漢人の発言 異例の質問のあとの発言をしていただいたんですけれども、私は質問のなかで因果関係の特定はしていません。その周辺での調査結果が示されているということと、実際に健康被害が発生しているということです。その因果関係は明らかではないけれども、全面的に可能性が否定できるという状況ではない限り、それは確認するための調査を東京都は行うべきだというのが私の考えです。
 また、法に対しても、ダイオキシンの特措法についても25年前のものがいまだに改正されていないということですとか、また、農工大の調査についても「法令に準拠したものではなく」ということですけれども、これは国際的に認められている検査でありますから、そこに示されているものに不安があるということであれば、そちらを調査するべきだと思います。
 どこを見るかということです。全て法が正しく今の現状でいいんだということなのか、少しでもそれと外れるもので心配なことがあれば、心配を取り除くということでもちゃんと調査して、違うということがわかればそれでいいわけです。
 環境問題というのはとにかく未然防止というのが最大ですよね。未然防止ということでいえば、可能性があるのであれば、そこをしっかりと調査して、確認をしていく、それを取り除いていくということが東京都としてやるべきことですし、私は都議会議員、環境建設委員として、そういう立場でこの問題については今後も向き合っていきたいと思っておりますので、ぜひ取り組みをお願いしたいと思います。