【報告】都議会自民党「裏金問題」-政治倫理条例検討委員会
「都議会自民党」の政治団体が政治資金パーティー券収入を中抜きし、政治資金収支報告書に記載していなかった「裏金問題」を受けて、第1回定例会で「政治倫理条例検討委員会」が設置されました。
委員会が毎週開催され、3人の有識者と、2019年と2022年の裏金発生時の自民党幹事長2人が参考人として招致されました。
▶委員会の録画はこちら(各日付をクリックしてください)
https://nws.stage.ac/metro-tokyo-stream/list.html?cat=C05&list=C05_1&id=1
▶漢人の「都議会自民党裏金問題」ショート動画のまとめはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=pjCApvkR1go
<参考人>
4月 9日 郷原信郎さん(弁護士)
4月16日 駒林良則さん(立命館大学法学部教授)、小宮あんり 都議会議員
4月23日 江藤俊昭さん(大正大学地域創生学部教授)、鈴木章浩 都議会議員
5月9日の委員会では、「委員に選出されていない少数会派・無所属の政治倫理条例の検討に関する意見聴取」が行われ、グリーンな東京・漢人あきこも意見表明を行いました。
以下、5月9日の意見表明の原稿です。
政治倫理条例検討委員会 意見表明
2025.5.9
グリーンな東京 漢人あきこ
発言の場をいただきありがとうございます。ただ、私も共同提案した「政治倫理審査会」設置動議の要綱では、少数・1人会派も会議の構成員となっていましたが、それが賛成少数で否決されたこと、そして、全議員の権利や身分にもかかわるセンシティブな条例の検討であるにもかかわらず、この政治倫理条例検討委員会が少数・1人会派をオブザーバーとしても構成員としていないことを指摘をしたうえで、意見表明を行います。
私の発言趣旨は5点です。
1)この度の政治倫理条例検討の契機となった「都議会自民党裏金問題」の全容解明はまだ程遠い状態です。
2)前回までの委員会を傍聴してきた限りでは、裏金作りの再発防止に効果があり、いくらかでも政治不信を払拭し、政治の信頼回復につながる、そのような条例が作られるとは思えません。
3)逆に、政治倫理条例は、多数派による議会コントロールの手段となり、特に少数意見を封殺し、少数派の議員の権利や身分を侵害することにつながるのではないかとの強い危惧があります。
4)このような議員の権利や身分に深くかかわる条例や制度は検討段階から、すべての会派、議員の参加の元で進められ、全会一致で制定されるべきです。
5)今、都議会に求められていて、必須なのは、議会として、この裏金問題に限定した明確な決議を全会一致で行うこと、また、政治資金規正法の改正を求める意見書を提出することです。
以上の5点について、それぞれ詳しく述べます。
1)「都議会自民党裏金問題」の全容解明はまだ程遠い
委員会には、参考人として、お二人の自民党元幹事長においでいただいて質疑が行われましたが、都議会自民党の裏金づくりが、いつから、どのように、なぜ行われていたのか不明なままです。今回明らかになった2019年と2022年だけでなく、少なくても10年以上前から行われていたとの回答はありましたが、いつからなのかはわかりません。この2年分については政治資金収支報告書の訂正が行われたとのことですが、それは「収入の増額修正」のみで、支出の修正はなく、繰越額が増えただけというのも不可解です。
2)裏金再発防止に効果があり、政治の信頼回復につながる条例が作られるとは思えない について
前回までの委員会を傍聴してきましたし、前回まとめられた「委員長提示のたたき台に係る各会派の意見を見ても、この条例に求める各会派の考えに相当な隔たりがあることがわかります。ポイントとなる「政治資金パーティー」や「企業・団体献金」に係る意見の一致も難しいのではないでしょうか。このバラバラ状態から都議選前の短期間に、裏金再発防止に効果があり、政治の信頼回復につながる実効性がある条例が作られるとは思えません。むしろ、遡及・遡っての適応はできないことから、条例を作ることによって、この裏金問題をあいまいなまま終わらせることになるのではないでしょうか。
4月16日の委員会に、参考人として出席された裏金発生時の自民党幹事長の小宮あんり議員の発言には驚きました。「お金はどうしてもかかるものはかかる。きれいごとだけでは、私たちは、いい政治はできないと思っている」というものです。私たちというのは自民党ということかと思います。この政治倫理条例検討委員会で、このような認識が披露されたこと、そして、その認識が特に訂正されることもないままに作られようとしている政治倫理条例とは何なのだろうかと不信感はますます膨らんでいます。
3)政治倫理条例は、民主的な議会を壊す危険なものともなり得ることについて
委員長提示の条例たたき台では、第1条(目的)には「議会の秩序及び名誉を守り」とありますが、先行すべき「議会基本条例」がないなかで、守るべき「議会の秩序や名誉」とは何でしょうか。第3条(政治倫理基準)においても、「議員の品位と名誉」「公正を疑われるような金品の授受」「道義的な批判を受けるような政治活動」など、あいまいで判断が分かれる表現があります。共通理解のない、抽象的な表現を掲げることで、議会の多数派による恣意的な運用を許すことになります。実際に、少数意見を封殺し、少数派の権利を侵害するような事例が全国的に発生しています。
恣意的判断・運用の余地のある抽象的・あいまいな表現は避けるべきです。
4)議員の権利や身分に深くかかわる条例や制度は、検討段階から、すべての会派、議員の参加の元で進められ、全会一致で制定されるべきです。
私は都議になってからのこの4年間、無所属ひとり会派で活動してきましたが、都議会では少数会派が軽視され、多数会派による閉鎖的な議会運営が行われています。常任委員会は非公開の協議会にオブザーバーとして参加していますが、議会運営委員会にもそこに設置された「議会のあり方検討会」もオブザーバーにもなれず、実質的な議論が行われる協議会などは非公開ですから、結論しかわからないという状態です。今回のこの政治倫理条例検討委員会は、非公開の打合せ会の議題を制限して、公開の委員会で実質的な議論が行われていることやインターネット中継もされていることは画期的ですが、やはり、少数会派は、委員にもオブザーバーにもなれてはいません。
「議員の権利や身分に深くかかわる条例や制度は全会一致で制定されるべき」という基本的な考え方は、みなさんお持ちだと思います。今回、都議選前に「裏金問題」への姿勢を示すことを優先して、その基本的な考え方を踏み外すようなことになることを危惧しています。そのようなことになれば、それは「裏金問題」を許して来た多数派による政治の在り方を認め継続することになります。
5)裏金問題に限定した明確な決議と政治資金規正法の改正を求める意見書の提出について
今、都議会に求められているのは、反省や再発防止のポーズをとるために民主主義を脅かすような中途半端な条例の制定を急ぐことではなく、「都議会自民党裏金問題」に限定した明確な決議を上げることで姿勢を示すことではないでしょうか。
5月3日の朝日新聞の世論踏査では、政治を「信頼している」は「大いに」1%、「ある程度」31%で、合わせて32%。「信頼していない」は「あまり」49%、「まったく」18%で、計67%です。
また、「企業団体献金は全面禁止すべきだ」に「近い」との回答が44%、「企業・団体にも政治活動の自由がある」に「近い」の回答が24%とダブルスコアに近いものでした。
政治不信の高まりを受けて、信頼を取り戻すためには、企業団体献金の抜け道となっている「政治資金パーティーの禁止」は必須ではないでしょうか。都議会として政治資金規正法の再改正を求める意見書を提出することを提案します。
以上で、グリーンな東京・漢人あきこからの意見表明を終わります。