ブログ

【報告】請願・陳情審査:神宮外苑/再エネ/葛西臨海水族園/新宿線/善福寺川調節池 ―2/14環境・建設委員会

 2/14の環境・建設委員会は、第1回定例会提出案件の説明と請願・陳情審査でした。
 採決結果は以下の通りです。政策方針が異なる内容に反対するのはわかりますが、都も行うとしている神宮外苑の「いちょう並木の保全」や、善福寺川調節池の「住民への周知と対応」を求める請願や陳情を不採択とする自民党、都民ファースト、公明党の態度は全く理解できません。

<環境局>
➊神宮外苑地区の再開発計画の審議に関する請願 ➡不採択
➋神宮外苑における146本のイチョウ並木などの歴史的樹木の確実な保全に関する請願 ➡不採択
➌再生可能エネルギーへの早急な転換を求める意見書の提出に関する陳情 ➡不採択
*採決態度(3件とも同じ) 採択:共産2、立憲、ミライ、グリーン 不採択:自民3、都ファ3、公明2

<建設局>
➍葛西臨海水族園(仮称)整備等事業に関する請願 ➡不採択
*採決態度 採択:共産2、ミライ、グリーン 不採択:自民3、都ファ3、公明2、立憲
➎葛西臨海公園の樹林の保全に関する陳情 ➡不採択
*採決態度 趣旨採択:共産2、ミライ、グリーン 不採択:自民3、都ファ3、公明2、立憲

➏西武新宿線野方駅-井荻駅間の連続立体交差事業に関する陳情 ➡継続
*グリーンな東京は採択を求めましたが、継続希望の会派が多く合わせました
➐東京都市計画河川第8号善福寺川の手続における住民への周知と対応に関する陳情 ➡不採択
*採決態度 採択:共産2、立憲、ミライ、グリーン 不採択:自民3、都ファ3、公明2

委員会の録画はこちら
https://metro-tokyo.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=902

第一回定例会 事前説明資料(請願・陳情含む)
環境局
https://kandoakiko.com/wp/wp-content/uploads/2024/02/0214_kankyou.pdf
建設局
https://kandoakiko.com/wp/wp-content/uploads/2024/02/0214_kensetu.pdf


以下、質問原稿と答弁骨子(実際には再質問・再答弁もあるなど異なります)

➊神宮外苑地区の再開発計画の審議に関する請願
➋神宮外苑における146本のイチョウ並木などの歴史的樹木の確実な保全に関する請願

Q1.環境影響評価審議会において、神宮外苑再開発に関して当面予定されている審査事項は、①新ラグビー場敷地の既存樹木の保全に関する見直し案を含む変更届、②全樹木の活力度調査の事後調査報告書、③いちょう並木の根茎調査の事後調査報告書の3件だと思いますが、そのように考えてよいですか。

➡政策調整担当部長答弁
〇環境影響評価については、事業者からアセス図書が提出され次第、内容を踏まえて手続きを実施
〇事業者による事後調査計画書等では、既存樹木の状況等に関する報告を昨年10月に、また、イチョウ並木の根系調査等に関する報告を本年6月に提出するとしている
〇なお、昨年10月に提出するとしていた報告書について、事業者は、12月以降に提出するとしている

Q2.「新ラグビー場敷地の既存樹木の保全に関する見直し案を含む変更届」を審査するには「樹木の活力度調査の事後調査報告書」が必要であり、審査は両届けがそろってからとなると思いますが、そのように理解してよいでしょうか。

➡政策調整担当部長答弁
〇環境影響評価については、事業者からアセス図書が提出され次第、内容を踏まえて手続きを実施
〇事業者は、評価書において、建築計画と重なるため存置することはできない樹木については、今後詳細な事業計画を検討する中で活力度等を勘案し、移植の検討を行うとしている

Q3.「いちょう並木の根茎調査」は現在実施中で、提出は6月ごろとされてきましたが、変更はないでしょうか。また、この調査の対象はイチョウ並木西側かと思いますが、その範囲にはラグビー場東門前の18本のエリアも含まれていますか。

➡政策調整担当部長答弁
〇事業者は、イチョウ並木の根系調査を2月上旬頃まで実施する予定としており、調査結果については、事業者において取りまとめの上、報告することとしている
〇調査対象箇所については、複数の樹木医から意見を聴き、イチョウ並木西側の明治神宮外苑テニスコート内及び明治神宮外苑青山駐車場の通路部分において10か所以上を調査対象にするとしている

Q4.今回の根茎調査はメディアに公開されていますが、都にも通知があったのですか。また、都および審議会委員も現地に出向いたのですか。

➡政策調整担当部長答弁
〇事業者から、根系調査の実施について聞いており、メディア公開日には都職員も現地に出向いている。審議会員は、出向いていない
〇本件根系調査は、専門家である樹木医立ち合いのもと実施

Q5.請願51号は、聖徳記念絵画館前の4列128本及びラグビー場東門前の18本を合わせた146本のイチョウ並木及び建国記念文庫の森のヒトツバタゴなどの歴史的樹木の確実な保全を求めています。環境影響評価審議会はこれに応える審査を行い、都は実効性のある具体的な保全策が講じられるよう継続的に関与していくと考えてよいですか。

➡政策調整担当部長答弁
〇本件環境影響評価書案に対する審議会答申では、審議会としても、評価書に沿って、今後の事業者の環境保全措置に継続的に関与していくとしている
〇都は、これまでも、事業者に対し、樹木保全を含む神宮外苑地区におけるまちづくりに関して要請を実施

Q6.小金井市議会は昨年第4回定例会で「神宮外苑再開発を止め、自然と歴史・文化を守ることを求める意見書」を都知事に提出しました。計画の詳細について都民や国民への周知が十分でない進め方に、国内のみならず世界各国からも疑問や批判が高まっているとして、計画について都民の意見を十分に聴く場を設け、歴史的景観を保全し、既存樹木を大量伐採しない計画への見直しをしていくのが当然の理である、神宮外苑再開発を止め、自然と歴史・文化を守ることを求める、というものです。環境局としての見解を伺います。

➡政策調整担当部長答弁
〇都は、環境アセス等の手続きについて、法令等に従って適切に進めるとともに、事業者に対し、既存樹木の保全や、都民の理解と共感を得られるよう、しっかりと取り組むことを要請してきている


➌再生可能エネルギーへの早急な転換を求める意見書の提出に関する陳情
3項目の内「3 発電と送配電の所有権分離及び再生可能エネルギーの優先接続・優先給電に係る政策を推進すること」

 昨年11/30から12/14にかけて、アラブ首長国連邦のドバイでCOP28が開催されました。その参加約200か国が合意した成果文書に盛り込まれた特に重要な内容として二つが挙げられます。
 一つ目は、「この決定的に重要な10年に行動を加速し、化石燃料から脱却する」です。紆余曲折を経てやっと確認された表現とのことですが、そもそもカーボンゼロをめざすCOPで化石燃料からの脱却が合意されていなかったこと自体が驚きで、その意味でも、画期的な合意ということです。化石燃料からの脱却ですから、石炭だけではなく、石油、天然ガスも含みます。

 次に注目すべきは、「2030年までに世界の再生可能エネルギーの設備容量を3倍に、エネルギー効率改善率を2倍にする努力に貢献するよう各国に要請する」です。略して「再エネ3倍・省エネ2倍」を後6年で達成しようという明確な合意です。
 したがって、日本にも、当然、東京都にも、2030年までに再エネ3倍が要請されたということです。
 都は2030年に再エネ利用率50%を目標としていますが、現在20%ほどだと思いますので、その3倍の60%へと目標を引き上げることが求められるわけです。この見解を問う質問は、この陳情審査ではそぐわないようなので別の機会に行います。

 以上のような現状認識の下で、出力抑制の現状と、所有権分離への都の見解を伺います。

Q1.このように、さらなる再エネ拡大が求められているにもかかわらず、再エネの出力抑制が増加しています。この現状を確認したいと思いますので、近年の日本全国における再エネの出力抑制の傾向について伺います。

➡気候変動対策部長答弁
〇出力制御は、2018年度に初めて九州エリアで行われ、その後、他のエリアにも拡大。国の取りまとめ資料によればその出力制御量は2022年度の実績で約5.7億kWh
〇出力制御量は増加傾向にあり、国による2023年度の出力制御見通しは、約17億kWh

 ちょうど、朝日新聞が先週末2/10(土)の朝刊のトップ記事でこの件を報道しています。朝日新聞の集計でも、2023年には出力制御が急増し、全国で計19.2億kWh。過去最多の2021年度の3倍以上になったとあります。答弁の国の数値は4月~3月、朝日新聞は1月~12月の違いがありますので、2022年度の約5.7億kWhという数値は、その3倍以前のものです。この急激な増加という現状をしっかりと認識して対処する必要があるわけです。
 なお、制御率が高いのは冷暖房を使わない春秋で、九州では4月が25.3%、年間で8.9%とのことですが、再エネ比率が高いヨーロッパでは、広域の需給調整によって、制御率を5%程度に抑えている国が多いとのことです。

Q2.早急な対応が求められることは明らかです。再エネの導入と最大限の活用には、国における優先接続と優先給電の取組を一層推進していくことが有効と考えますが、都の見解を伺います。

➡気候変動対策部長答弁
〇既存系統の空き容量の有無に関わらず接続を可能とする取組や、再エネが優先的に利用できるようにするための出力制御方法の見直しは、再エネ利用の拡大が期待
〇都は、これらの取組強化について従前から国に提案要求

 昨年11月に提出された「令和6年度 国の予算編成に対する東京都の提案要求」において、「再エネの優先接続を一層推進するなど、再エネの基幹エネルギー化に向けた取組の更なる強化を図ること」、および「出力抑制の最小化」の記載があります。この国への提案要求は、2009(H21)年度から14年間毎年要望してきたと伺いました。ありがとうございます。現在の事態を招いた国の対応の鈍さ・不作為に憤りを感じますね。

Q3.最後に、10社の送配電事業者が自社に有利になるよう、様々な不正を行っているが、所有権分離すれば不正が抑制され、再エネ拡大に有効と思いますが、都の見解を伺います。

➡気候変動対策部長答弁
〇所有権分離の導入は、再エネ拡大に寄与するとの意見もある一方、国の専門家会議において、大手電力会社の不正等に対する直接的な解決策にならないとの指摘や、災害時の迅速な対応などへの影響を懸念する声も存在。
〇国は、電力システム改革の検証の中で、こうした様々な意見も踏まえ、引き続き所有権分離について包括的な検討を進めていく。都としては、国の検討状況を注視

 帝国データバンクによると、新電力706社のうち、2022年11月時点で倒産22社、撤退33社、新規申込受付停止91社とのことです。新電力の21%が倒産等に追い込まれているということです。
 再エネ3倍の実現に向けては、さまざまな懸念を速やかに払しょくして、発電と送配電の所有権分離を導入することは必須です。都は国の検討状況を注視するのではなく、優先接続を要望してきたように、所有権分離にいても毅然として要望することを求めます。
都議会として、陳情者の求める「再生可能エネルギーへの早急な転換を求める意見書」を国に提出することに賛成し、陳情の採択を委員のみなさんにお願いして質問を終わります。


➍葛西臨海水族園(仮称)整備等事業に関する請願

➎葛西臨海公園の樹林の保全に関する陳情

〇意見表明
 建設局のHPにおいて「葛西臨海水族園(仮称)整備等事業に関するよくある質問」が2/8に、「葛西臨海水族園のリニューアルに関するファクトシード」も2月に入って更新されました。
 「よくある質問」で今回更新されたのは、<事業スケジュール/PFI事業者/新しい水族園と今までの水族園の違い/建設場所/新しい水族園の配置位置や特徴/芝生広場中心に整備すれば、樹木への影響を減らせるのではないか/新しい展示内容/樹木の取り扱いについて>が主な内容です。
 昨年11月には新水族園の基本設計が終わり、現在、実施設計に入っているようです。また、樹木調査、土壌調査等の各種調査が、今年6月にかけて行われているようです。樹木や土壌などの調査については、基本設計、実施設計の前に行われるべきです。
 新しい水族園の施設は、30年以上かけて育まれてきた樹林地に、新水族園本館の他、エネルギーセンター棟、屋外ろ過機置場などの大きな施設を建設するとしています。危惧した以上の樹林地が侵害されるようです。
 「市バス広場中心に整備すれば、樹木への影響を減らせるのではないか」への回答としては、新たに作る「共生の杜」や、賑わいや活性化などが記載されていますが、全く説得力がありません。
 一方、「1400本の樹木を伐採するなどの情報が、SNSを中心に一部で流れていますが、事実ではありません」との昨年6月からの記載もまだ残っていますが、これは削除すべきです。
 「新し水族園の建設に伴う樹木の取り扱いについて」において、新しい水族園の計画敷地には植栽した樹木が約1700本あること、樹木診断の結果、倒木や枝折れの危険がある樹木や、健全度や育成状況に問題があり移植しても枯れる可能性が高い樹木などが約400本、外来種約200本であるため、これらを除く、残り1100本が保存・移植の対象となる、とのことです。
 伐採が危惧される計画敷地の植栽は1400本ではなく、1700本であったこと、その内600本は、すでに伐採対象であり、1100本が保存・移植の対象となったと絞られたわけですが、先ほどの質疑・答弁で、保存300本なので、移植800本であることがわかりました。
 特に深く根を張る高木は土中環境にも深くかかわりますので移植によって失われる生物多様性への配慮も求められます。
 請願19号の求める既存樹木の伐採・移植を最小限とし、自然環境を最大限守ることなど5項目を事業者に指導し、必要があれば計画の補正を命ずること、及び、計画書等の速やかな公表については当然取り組まれるべきです。また、陳情84号が求める樹林の保全にも最大限の対応を求めるものです。


➏西武新宿線野方駅-井荻駅間の連続立体交差事業に関する陳情

Q1.2016(H28)年度概略検討の内容について
  西武鉄道新宿線(野方~井荻駅付近)の連続立体交差事業については、2016(H28)年度に概略設計報告書が取りまとめられ、また国の着工準備採択が行われました。この概略設計においては構造形式の比較評価が行われ、高架仮線案が最適との結果が示されています。その検討内容と、比較評価の結果、地下方式が劣ると判断した理由は何か伺います。

➡道路建設部長答弁
〇平成28年度に実施した連続立体交差事業調査では、鉄道周辺の地形的条件、除却される踏切の数など計画的条件、事業費や事業期間など事業的条件の3条件で構造形式を比較検討
〇地形的条件は、地下方式は鷺ノ宮駅付近において地下構造物が妙正寺川に近接、計画的条件は、地下方式の方が高架方式より除却出来る踏切数が少ない、事業的条件は、地下方式の方が高架方式より事業費が高いなどから、高架仮線案が最適

Q2.2016年、6年前に高架仮線方式が「最適案」とされたわけですが、この評価は現在でも変わっていないでしょうか。

➡道路建設部長答弁
〇平成28年度に実施した連続立体交差事業調査以降、比較検討は未実施

Q3.着工準備採択時点での高架仮線方式の総事業費は約850億円と見積もられていましたが、現時点での見積もり額はいくらでしょうか。

➡道路建設部長答弁
〇今年度、物価上昇分を見込み、事業費の見直しを行っており、高架仮線方式の事業費は約1,040億円

Q4.構造形式の比較検討において、地下方式の場合、鉄道買収が1万㎡を超えるとなっていますが、線路部、駅部などその内訳を伺います。

➡道路建設部長答弁
〇地下方式の場合の用地取得面積については、線路部、駅部毎には未算出

Q5.次に陳情者が求めている複線シールド方式について伺います。
 2016(H28)年の概略検討において、地下方式の施工方法としては単線シールド方式のみを検討しています、それはなぜでしょうか。複線シールド方式についても併せて検討すべきと考えますが、いかがでしょう。

➡道路建設部長答弁
〇平成28年度に実施した連続立体交差事業調査における鉄道の構造形式については、標準的な工法で高架や地下方式について比較検討
〇地下方式については、複線シールドに比べ断面が小さく、支障物との離隔の確保や縦断的に狭い空間を通過する場合に有利となる単線シールドで検討
 
Q6.着工準備採択後の、この路線の事業化に向けた検討状況と、今後のプロセス、スケジュールについて伺います。

➡道路建設部長答弁
〇本区間については、平成29年4月に国から着工準備採択を受け、構造形式や施工方  法を検討を実施
〇一方、中野区においても野方駅周辺のまちづくりや鉄道立体化の範囲を検討しており、その検討内容について、区と意見交換を実施
〇引き続き、地元区や鉄道事業者と連携しながら、鉄道周辺の地形などの地形的条件、除却する踏切の数などの計画的条件、事業費などの事業的条件の三条件により、構造形式を比較するなど検討を深度化

Q7.今後、国との比較設計協議に向けた都としての案の整理の中で、複線シールド方式を含む構造形式の選定に立ち返った検討が行われると考えてよいですか。

➡道路建設部長答弁
〇本区間については、現在、中野区において野方駅周辺のまちづくりや鉄道立体化の範囲を検討しており、その検討内容について、区と意見交換を実施
〇今後、地元区や鉄道事業者と連携しながら、構造形式を比較するなど検討を深度化

 2016(H28)年の概略検討においては高架仮線方式が最適案として報告されていますが、その後、中野区との調整があり、事業範囲の検討も行われていることから、今後、2016年には検討されなかった複線シールド方式を含む構造形式が比較検討される、ということです。
 本陳情は、「複線シールド工法による地下化の検討」を求めていますので、願意は満たされるようです。議会としても、そのように進められるよう後押しするために採択とするべきと考えます。
 ところが、多くの会派が「継続審査」を求められているため、そのような取り扱いとなります。
 この継続審査の扱いは議会によって異なります。私の地元の小金井市議会では、継続となった案件は、閉会中の委員会で毎回議題となり、希望する議員は質問することができますが、都議会の場合は、委員会としての合意がなければ、再び議題となることはないようです。いわゆる棚上げの状態になるようです。


➐東京都市計画河川第8号善福寺川の手続における住民への周知と対応に関する陳情

●最初に、河川整備の基本的な考え方に関して、当該調節池がなぜ必要なのか、いくつかの点から伺います。

Q1.河川整備計画の策定にあたって、前提となる計画雨量を年超過確率1/20に相当する1時間当たり75ミリとしていますが、これは、善福寺川の流域全体にピーク時に1時間当たり75ミリの雨が降ることを想定しているものだと理解してよいですか。あわせて、いずれかの河川流域全域において、この量の降雨があった実績があるか伺います。

➡河川部長答弁
〇計画雨量の考え方については、その理解の通り
〇渋谷川・古川において、平成11年に時間100ミリを超える降雨の範囲が流域の約6割を占めた実績あり
〇調節池の計画にあたっては、その上流域の計画降雨量をもとに検討

Q2.いわゆるゲリラ的豪雨が象徴するように、1時間当たり75ミリの雨が観測されることは決して珍しいことではなくなっています。しかし、その多くは、特定の河川流域のそのまた一部に集中的に降るケースがほとんどで、流域全体で見れば必ずしも1時間当たり75ミリの雨量に達しない場合も多くあると考えられます。
 こうした、局地的でいわば偏りの強い豪雨に対しては、広域的で大掛かりな河川整備ではなく、むしろ雨水貯留施設やいわゆるグリーンインフラなど、地域地域で柔軟に対応できる治水機能の充実こそが効果的ではないかと思いますが、いかがですか。

➡河川部長答弁
〇台風や集中豪雨による洪水対策としては、河道及び調節池による河川整備と浸透ますなどの設置による流域対策を両輪で進める必要あり
 
Q3.計画雨量相当の降雨があった場合に、そのうちどの程度の雨が下水から河川に流下するかを示す値、すなわち流出係数は、河川整備目標を設定する際の基本となるものです。
 流出係数は「土地利用状況等を踏まえて設定」しているとのことですが、善福寺川流域の流出係数とその根拠を伺います。
 河川流域ごとの土地利用の違いは、計画における流出係数に反映されているのでしょうか。反映されていないとしたら、それはなぜですか。

➡河川部長答弁
〇各河川における流出係数は、当該流域の将来の土地利用を踏まえて設定
〇善福寺川における流出係数は、将来の土地利用を踏まえて0.8

A3-2 計画降雨量においても、また流出係数においても、必要な河川整備目標を過大に設定しているのではないでしょうか。
 一層の宅地化を想定した流出係数の設定は、過剰な都市化を誘導するものであり、緑地・畑地の保全、保水・浸透機能の充実など、持続可能で地球環境への負荷の少ないまちづくりを進めようとしている自治体の努力に反するものではないかと思いますが、いかがですか。

➡河川部長答弁
〇近年、時間50ミリを超える降雨に伴う水害が頻発していることを踏まえ、学識経験者の意見を参考に、平成24年に策定した「中小河川における都の整備方針」において、目標降雨を年超過確率20分の1の規模の降雨に設定
〇流出係数は、将来の土地利用を踏まえて設定。善福寺川流域については既に市街化が進んでおり、都市化を誘導するものではない

 23区とその周辺だけを見ても、河川流域ごとに土地の利用状況は大きく異なっていて、それぞれに異なる流出係数が前提とされるべきです。
 ちなみに、善福寺川流域の一部を構成する武蔵野市では、現時点での流出係数を0.50と評価し、「令和25 (2043) 年までの流出係数*の0.40の達成を目指します」としています。これは2023年の『武蔵野市下水道総合計画』に示されています。
 下水道局に確認したところ、善福寺川処理分区の下水道の流出係数も、0.6から0.75と処理小分区ごとに定めているとのことです。
 善福寺川流域の流出係数も、もっとていねいに設定されるべきではないでしょうか。。

 今回の調節池計画で立ち退きを迫られることになる原寺分橋付近の地権者の方からの声を紹介します。
「原寺分橋周辺では、護岸工事以後善福寺川の氾濫は一度もありません。唯一平成17年の大雨も川より先に道路側の下水氾濫により被災しました。
しかし、それ以後、善福寺川に流れ込んでいた雨水も武蔵野市の雨水対策により道路の下水道氾濫もなくなり、365日水鳥の棲む水辺となっています。
善福寺川の他の地域も同様だと思います、蛇行のケ所の多い善福寺川は各箇所水の流れに相違があるのです。
 その特徴を調査し個々の対策により善福寺川の大雨による氾濫は防げると考えます。これまでの都からの説明ではその各所の調査が不十分であり情報公開されてません。」

 この調節池計画の前提となる降雨量や流出係数の設定の根拠や、その持つ意味が十分に伝えられ、あるいは了解されているとは言い難い状況です。
 しかも、この前提に立ったとしても、今回の調節池計画を優先的に、拙速なまでに急いで整備しなければならないとする根拠には疑問が残ります。

●次に、善福寺川の河川整備の進め方について伺います。
Q4.善福寺川における河道整備事業について、現在事業中の護岸整備率を伺います。
残る整備箇所の延長はどのくらいになりますか。
また、その部分の整備の時期はいつになるのですか。
Q5.未整備区間を整備するとした場合、新たに取得しなければならない民有地はどのくらいの規模になりますか。

➡河川部長答弁
〇善福寺川の護岸整備率は61%
〇残る延長は約4キロメートルであり、護岸整備は原則下流側より順次進めていく
〇護岸整備に伴い、民有地の取得は必要であるが、その規模については、事業着手時に測量を実施することで確定していく

Q6.河道の50mm整備が完了した場合、既存の善福寺川は何mmの雨量に対応するものとなるのですか。

➡河川部長答弁
〇善福寺川では、早期に治水安全度を高めるため、河道及び調節池による河川整備と浸透ますなどの設置による流域対策を両輪で進めていくこととしており、河道の整備を優先した場合に対応する降雨量は算出していない
〇なお、すべての整備が完了すると、1時間あたり75ミリの降雨に対応することとなる

Q6-2 巨大な調節池を、地域の強い異論の中で、1000億円もかけて、しかも10年もの工期をかけて整備することを急ぐよりも、護岸整備を優先する方が当面の治水能力の改善のためにははるかに効果的で効率的ではないでしょうか。なぜ護岸整備を優先的に進めないのですか。

➡河川部長答弁
〇都の中小河川においては、下流から順次、川幅を広げるなどの護岸整備を行うことを基本
〇調節池を整備することによって、早期に治水安全度を向上
〇このうち、沿川に住宅が密集するなど整備に長期間を要する善福寺川においては、護岸整備に先行して調節池を設置し、下流の安全性を高めた上で、上流に向けて3箇所において護岸を整備
〇引き続き、水害に対する安全性の早期向上にむけて、護岸及び調節池を整備

●次に、本計画の具体的な内容について伺います。
 本計画では、深さ40mに達する地下に、直径10m近い巨大なトンネルを掘ることになります。たとえその多くが都道の地下、河川の下を通るとしても、その安全管理は極めて重要な課題です。外環道の調布での陥没事故を引くまでもなく、シールドトンネル工事の安全性への疑念、懸念が強まっている中で、よほど慎重な調査設計と丁寧な説明が不可欠です。

Q7.これまで都内におけるシールド工法の地下調節池の工事において、地上部の家屋、道路等に生じた被害はありますか。あればその概要を伺います。

➡河川部長答弁
〇都が実施したシールド工法による調節池工事において、トンネル上部にある家屋や道路等に被害が生じた事例はなし

Q8.区分地上権が設定される範囲、並びに対象となる土地・建物の件数を伺います。

➡河川部長答弁
〇区分地上権の設定範囲や土地・建物の件数は、今後実施する用地測量で確定

Q9.河川下も含め、地下の地盤、地層の状況を確認するためのボーリング調査は行われましたか。ボーリングの個所数、調査の時期、その結果の概要を伺います。

➡河川部長答弁
〇シールドマシンの通過ルートにおいて、令和3年度から5年度に28本のボーリング調査を行い、主に粘性土や砂礫からなる地層であることを確認

Q10.原寺分橋付近をはじめとした湧水源の状況ならびに地下水脈の調査の実施状況とその結果を伺います。

➡河川部長答弁
〇湧水源の場所や量などの詳細な状況は把握していないが、原寺分橋下流に湧水が存在していることは把握
〇ボーリング調査実施時に、地下水位の状況を確認

Q11.シールド工事により掘削される土の量はどの程度になるのか伺います。
Q12.その排出土の仮置き場、資材置き場、ダンプ等の工事車両の待機場所など、都市計画区域以外にも広大な敷地が必要になるのではないでしょうか。それらの土地はどこに確保するつもりですか。ロケット公園に加え、隣の中央公園も工事のために使用、占用することはないと考えてよいですか。

➡河川部長答弁
〇トンネル部分の掘削土量は約40万立米を想定。今後、詳細設計で数字を精査していく。
〇工事の施工にあたっては、都市計画の区域外にも用地が必要
〇なお、その箇所や規模については、詳細設計の中で検討

Q13.関根文化公園の現存する樹木の保全、及び、遊具など子どもたちのための機能の維持・確保についての考え方を伺います。

➡河川部長答弁
◯樹木については、可能なものは移植していくなど影響が小さくなるよう検討
◯また、本公園は施工ヤードとしても活用するが、一部でも子供達の遊び場として利用できるよう検討

 都市計画と並行して、むしろそれに先だって設計作業を進めている中で、そして事業所管である建設局が手続きの前面に立っている中で、住民が都市計画の適否だけでなく、実際の事業・工事の内容や影響について知りたいと願うのは至極当然のことです。
 こうした基本的なことすら説明されていないことは大きな問題と言わざるを得ません。

●最後に、都市計画手続きと地元区の意向について伺います。
 異例な都市計画手続きであることは、都市計画の素案も出る前から、設計に入っていたこと、協定事業として早々に事業者を特定してしまっていること、など、11月の委員会の事務事業質疑でも指摘しました。

 2/6の都市計画審議会で賛成多数で決定されてしまいましたが、都市計画案に対して提出された意見は637件で、そのうち計画反対が548件、賛成が5件、その他が39件とのことです。548件の反対は重く受け止めなければなりません。

Q14.1/20、都市計画案の公告縦覧と意見募集が終了したのちに、説明会が開催されました。都市計画手続きのこのタイミングで説明会を開催したことは、ありますか。また、説明会開催の趣旨、開催に至った理由を伺います。

➡河川部長答弁
〇河川事業においては、この時期に説明会の開催はない
〇今回の調節池は初めてECI方式を適用するものであり、本説明会については、都市計画法に基づく素案説明会に加えて、住民の理解をさらに促進するため、この時期に実施したもの

Q15.この異例の説明会での住民の意見も踏まえ、当該都市計画についての意見照会に対する区長の回答をどのように受け止めていますか。

➡河川部長答弁
〇区長からは本都市計画案に異議がないとの回答あり
〇また、事業の実施にあたっては、住民の意見を反映し、区と連携・協力して進めるよう要望があったことは承知
〇今後も引き続き、地域住民に対し丁寧な説明を行うとともに地元の声に耳を傾け、住民の理解促進に努めていく

 杉並区長の回答は、「東京都市計画河川第8号善福寺川の変更について、計画案のとおり異議ありません。」としつつ、「なお、地元自治体の長として、別紙のとおり住民の切実な声や今後の進め方について、区の考え方を示しますので、都市計画事業の実施にあたっては、住民意見を十分に反映し区と連携.協力した進め方をお願いいたします。」とし、別紙として次のような意見が添えられています。

都市計画決定にあたって
 本都市計画案については、昨年8月の都市計画変更素案の説明会以降「本計画案自体を知らない人が多くいる」、「周知が不足している」等の理由により、全区的な説明会や地域ごとの説明会の開催が求められています。
 また、シールドトンネルの安全性に関する懸念や、都立・区立公園では子供の遊び場・地域の憩いの場の喪失、湧水の枯渇、生態系の破壊などの声も多く寄せられています。
都市計画変更素案の公表から東京都の都市計画審議会に諮られるまでの期間が半年程度しかなく、都は拙速に進めているという意見も多く届いています。本都市計画の決定にあたっては、地域住民への周知が必ずしも十分でないとの住民意見に十分留意し、都知事として判断願います。

Q16.最後に伺います。
 都市計画それ自体は了としつつも、住民への周知が不足し、疑問・懸念に答えておらず、手続きが拙速であることを改めて指摘し、それを踏まえて都市計画の決定を行うよう求めています。
 これはまさに、陳情の願意とぴったり一致するものです。
 あらためて今後この調節池事業をどのように進めていくのか見解を伺います。

➡河川部長答弁
〇今後も引き続き、事業説明会や工事説明会など様々な機会を捉えて、地域住民に対し丁寧な説明を行うとともに地元の声に耳を傾け、住民の理解促進に努めていく

 都としては、この陳情の願意に沿った対応をするとのことです。議会がこの陳情を否決し、都に対して、都市計画法18条の精神をないがしろにするような対応を求めるということにありえないと思います。採択するのが当然の陳情であると申し上げて質問を終わります。