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ブログを更新★【議連報告】神宮外苑議連、樹木保存を知事に要望+ヘリテージアラートへの事業者反論の検証①

 12月22日、「神宮外苑再開発をとめ、自然と歴史・文化を守る東京都議会議員連盟」は小池知事に「神宮外苑再開発に係る既存樹木の保全について環境影響評価審議会で徹底審議を求める要望書」を提出し、併せて「ヘリテージアラートへの事業者反論に対する都議会外苑議連の検証結果」の第一弾としてまとめた9項目を記者会見で発表しました。


 要望書は中村副知事に手交、「受け留めます」とのコメントがありました。

 神宮外苑議連は10月4日に6会派で結成し、現在41名で活動しています。
*参照:議連発足報告 https://kandoakiko.com/blog/2023/10/4037/

 


 

神宮外苑再開発に係る既存樹木の保全について
環境影響評価審議会で徹底審議を求める要望書


東京都知事 小池百合子 様
環境局長 栗岡祥一 様

                                2023年12月22日
神宮外苑再開発をとめ、自然と歴史・文化を守る
東京都議員議連      会長 田の上いくこ

 「神宮外苑の樹木伐採は見直してほしい」「神宮外苑の歴史的樹木の確実な保全を」など、都民の声が大きく広がっています。
 都議会では、「神宮外苑再開発をとめ、自然と歴史・文化を守る東京都議会議員連盟」が6会派40人で結成され、その後41人に増えています。
 都議会議連はこの間、国会議連との懇談や国内イコモス・石川幹子理事からのヒアリングを通じて、「イコモスのヘリテージ・アラートの事業者反論」について検証し、事業者の反論が科学的データに基づかない論理であることが明らかになりました。
 国際イコモスによるヘリテージ・アラート発出直後の9月、東京都は都市整備局長名および環境局長名で三井不動産ら事業者に対し、「具体的な樹木保全策」を求める要請をしました。これを受けて事業者が、どのような内容の見直し案の変更届を提出するのかが注目されます。また、既存樹木の活力度調査の結果も事後調査報告書として、今後提出される予定です。
 これらに対して東京都がどう対応するのかが、外苑再開発をめぐる焦眉の課題であり、小池都知事の対応も問われます。
 146本のイチョウ並木をはじめとする樹木が保存される見直しが行われているのか、専門的かつ科学的見地から審議する必要があります。
 よって、都議会議連として以下の事項を求めるものです。

  1. 事業者が提出する「具体的な樹木保全策」の変更届及び事後調査報告書について、環境影響評価審議会を開催し再審議を行うこと
  2.  環境影響評価審議会において、イコモスを参考人として招致し、意見を聞くこと

以上


 

<ヘリテージアラートへの事業者反論に対する都議会外苑議連の検証結果>

 2023年10月31日、神宮外苑を守る都議会議員連盟は、国会議員連盟と今後の活動について議論を交わすとともに、「徹底検証-ヘリテージアラートへの事業者の反論」と題し、日本イコモス国内委員会理事の石川幹子中央大学研究開発機構教授、東大名誉教授をお招きし、ヘリテージアラートへの事業者の反論に対し、科学的根拠に基づいた検証を行った。以下に、都議会議連がまとめた検証結果の柱を記述する。

1【事業者による〝ヘリテージアラートは一方的〟という指摘について】
 事業者に対して日本イコモス国内委員会は、20回にわたる質問や意見を送付したが、一度も事業者及び東京都は回答をしてこなかった。ゆえに、事業者による「一方的」とする指摘は当たらない。
 日本イコモス国内委員会は国際イコモスの総会の場で報告を行い、全会一致でヘリテージアラートが発出された。各国の委員からは都市公園(外苑は「都市公園に準ずる」として公的にも認められいる公園である)における驚くべき再開発の事例であり、昨今見たことのない事例であるとの見解を得ている。
 国際都市を標榜する東京都として、国際イコモス総会の場で発出されたヘリテージ・アラートの重みを受け止め、真摯な回答が求められる。

2【現況植生図が提出されていない問題】
 事業者が外苑の森をアセスするにあたり、全体像の把握が行われておらず、樹木ごとの把握も科学的に行われていない。また、本多静六氏は森林生態系仮説を立てたが、内苑の思想だけではなく外苑も同じ思想、科学的見地に基づいて造られている。一つ一つの樹木が全体に対するどのような役割を担っているのかを把握することが、外苑のように造園技術の粋を集めて作られた「杜」にたいする不可欠な見識といえる。
 ところが事業者は、環境影響評価書において緑地現況図のみを提出し、相観による現況植生図を提出していない為、苑内の緑地がどのように相関し、機能しているかを知ることができない。これは神宮外苑及び環境影響評価制度への軽視にほかならない。

3【植生群落調査の杜撰さを指摘したイコモス】
 事業者は建国記念文庫の森の群落調査を単一群落と判定し、かつ落葉広葉樹林と判定したが、イコモスの調査では4つの群落が確認されていて、落葉広葉樹林でなく混交林である。
 外苑創建の以前、江戸期から青山の地で珍樹として大切にされ、1903年に天然記念物にも指定されたヒトツバタゴ(通称ナンジャモンジャの木)があったが、その三世代目が外苑には息づいている。建国記念文庫の森にヒトツバタゴが群生しているが、そうした経緯をもった重要な植生群落さえ事業者が見落としているのは、外苑の環境影響評価として必要な要素を欠いていることが明らかである。

4【建国記念文庫の森の保全策について】
 事業者は国際イコモスが「育まれてきた都市の森を完全に破壊する」と指摘したことに対し、「事実からかけ離れており、多くの方の誤解を生みかねない」と反論しています。しかし、事業者自らが記載しているように、「建国記念文庫の既存樹木 149 本のうち、58 本を保存、50 本を移植する計画」であり、三分の一ほどしか森は残らず、「敷地の北側は保全エリア」と強弁しているが、南側に55mの巨大建築物が建ち、樹木がまともに育成するはずがなく、少なくとも「保全」と言えるような計画ではない。
 また、「文化交流施設棟周辺及び中央広場廻りへ約112本の樹木を移植し、さらに新植樹木も配置することで、建国記念文庫の樹林及び生態系を復元する計画」としているが、日本イコモスが指摘する4群落からなる建国記念文庫の森を単一群落と評価した事業者が「樹林及び生態系を復元する」といっても説得力がない。根の保存方法、仮移植する場所の土質まで配慮するなど、世界水準のマニュアルや科学的根拠に基づいた調査が必要であり、都が責任をもって建国記念文庫の森の保全計画を示すべきである。

5【樹齢はわからないという科学的分析の基本と誠意の欠如】
 事業者はヘリテージアラートへの反論の中で「樹齢を確定できる記録がない」としたが、樹齢を把握することは可能であり、樹種によるが樹木を傷つけずにおおよその樹齢の把握が求められる。たとえば年単位の幹回りを計測する方法なら、年単位の時間はかかるもののおおよその樹齢の把握は可能である。2012年から都幹部職員と森喜朗当時衆院議員が再開発の水面下交渉をしていたのであり、こうした基礎調査を行う時間は十分にあったはずである。一本一本に歴史と経緯がある外苑の樹木にたいして、樹齢も把握せずに伐採・移植計画を策定したことは科学的分析の基本や外苑という「杜」への敬意が抜け落ちている。

6【銀杏並木の活力度調査のデータについて】
 日本イコモスによれば銀杏並木のうち、現在6本が健全度を落としていることが指摘され、事業者も認めている。2019年から認識していたことがわかっているが環境影響評価審議会にはそうした6本について活力度Aというデータが提出をされている。
 データはアセスに関わって調査した時期のものでいいことを逆手にとって、銀杏並木に重大な影響を与える新野球場建設の問題点を隠そうとしたといわれて仕方がない。事後調査報告書を審議会に提出するとしているが、イコモスから指摘をされるまで隠していたことは不誠実であり、到底国民の納得を得られない。環境アセスにおいて、科学的根拠と正確なファクト・データに基づいた審議が重要であり、環境アセスの再審が求められる。

7【超高層ビルが建つのは「都市計画公園区域の外」という事業者反論について】
 事業者は「本計画においては、事務所棟・複合棟A・複合棟Bの建設を予定しておりますが、全て都市計画公園区域の外です。」と回答した。都市計画公園区域を外して、そこにビルを建てるようにしたのがこの再開発計画の重大な問題の一つである。そのことを隠して、都市計画公園区域の外に建てる計画とするのは虚偽的ロジックであり、およそ反論ともいえないものである。

8【『絵画館前広場を整備し、創建時の姿を新たな形で再現』という言葉への疑問】
 事業者は、オープンスペースは増えると述べているが、スタジアムの周りや超高層ビルの下の道までオープンスペースに加えている。
 また、「絵画館前広場」(おそらく芝生広場を指している。「絵画館前広場」は日本最初のアスファルト舗装が施されたスペースのことを言うので間違いと思われる)について「創建時の姿を新たな形で再現」と記したが、現在の絵画館前芝生広場は広大な風景が広がっているのに対し、再開発後にオープンスペースとなるのは銀杏並木から絵画館に伸びるおよそ三分の一のスペースだけで、左右のスペースはテニス場となり、樹木で施設を隠す計画となっている。結果、視界は三分の一に減ることになり、およそ「創建時の姿」と呼べるような計画ではない。

9【住民周知を丁寧に行ってきたという回答について】
 事業者は「法令等に基づく説明会も2019年から2021年にかけて計6回実施の上、2023年7月にはさらに追加で任意の説明会を3回実施」と述べ、丁寧な対応を行っていると反論した。しかし、外苑再開発が2012年に森喜朗氏と佐藤副知事、安井技監でイメージを共有していたこと、三井不動産も地区計画を策定する段階から計画に関わっていたこと、またその時期に、再開発等促進区の適用や公園まちづくり制度の適用が計画されていたことも議会の審議で明らかになっている。事業者は「市民や利害関係者の声を無視しているかのようなイコモスの記述は大変遺憾」と述べているが、まさに住民不在で、不公平な規制緩和をディベロッパーや地権者に施した計画であり、住民への丁寧な説明と合意形成が求められる。

 以上が都議会神宮外苑議連の「ヘリテージアラートへの事業者反論」の徹底検証のまとめである。事業者は科学的論拠を持たず、中には虚偽的な回答もあり、真摯な議論とは言えない。
事業者はイコモスなど専門家との話し合いを実施し、科学的議論の機会を設けるよう求めるものである。
 必要に応じて、我々議会とも対話の機会を設ける事も一つの案である。また、小池都知事に対しては施行認可権者として、住民や専門家の意見、疑問に事業者が誠実に向きあうよう指摘することを求めるものである。