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【報告】3/28「日本手話」当事者のお話を聞く会

 3月28日、手話言語条例検討ワーキングチームの委員はじめ各会派の議員のみなさんに呼びかけて、『「日本手話」当事者のお話を聞く会』を開催しました。

●日本手話と日本語対応手話

 「日本手話」——聞きなれない言葉ですが、『手話言語条例』の制定に向けた都議会の議論の中で得たとても大きな論点、学びでした。「手話は言語である」と、最近はよく言われます。しかし、「言語である」とはどういう意味なのだろうか。私たちが当たり前に使っている日本語、あるいは様々な外国語も、もともとは音声言語であり、音の世界から生まれた言語です。しかし、生来、聴こえに不自由があって「音」の世界を知らないで育った人たち、ここでは「ろう者」と呼ばせてもらいますが、「ろう者」にとって、音声言語は決して”自然に”身に付くものではありません。

 では、「ろう者」はどうやって物を認識し、考え、意思疎通を図るのでしょう。

 そこに、音声言語としての日本語とは異なる独自の言語としての「手話」が生まれてきます。それは、手指、さらには体全体や表情などを駆使して物事を認識し、表現し、”会話”する言語です。

 音の世界と切り離されたろう者が、母語として用いる手話を「日本手話」と呼びます。これに対して、中途失聴など、聴こえに不自由はあるが日本語を母語として取得している人たちなどが、日本語をそれに対応した手話表現に置き換えてコミュニケーションをとる手段を「日本語対応手話」と言います。日本手話と日本語対応手話。どちらも手話という手段を使った言語表現であり、どちらも大切な意思疎通の手段ではありますが、その意味や役割は異なり、言語表現の手段だけでなく言語を構成する文法も違います。

 そのことを改めて学びたい、しっかりと頭に入れておきたいということで企画したのが、今回の「お話を聞く会」でした。

●講師は日本手話の話者、普及・教育に長く取り組んできた小薗江聡さん

講師の小薗江聡さんと通訳者の山崎晋さんを囲んで

 講師をお願いしたのは、日本手話の話者であり、同時にその普及・教育に長く取り組んでこられた小薗江聡さん。お兄さんもろう者である広義のデフファミリーの出身で、元国立リハビリテーションセンター学院手話通訳学科専任教師。現在、日本手話教室を池袋で主宰しておられ、東京外国語大学講師でもあります。

●手話は、少数言語の保障、言語に関する人権の問題

 私たちは、しばしば音声の世界での言語とそれを基にした文字による会話を当たり前のこととして生きています。音のない世界で生まれ確立されてきた言語があることを知るのは、新鮮で衝撃的な経験でもありました。手話は、聴覚障害者の意思疎通を保障する福祉や「合理的配慮」の課題だという認識が、とても狭く一面的なものであることも学びました。手話は、福祉というよりも、むしろ少数言語の保障、言語に関する人権の問題なのですね。

 言語はコミュニケーションの基礎であるだけでなく、さらには文化や歴史を紡ぐ糸でもあります。今、「日本手話」は、その維持や継承自体がとても難しい状況に置かれています。日本手話を使える手話通訳者は少なく、日本手話当事者の学びや育ち、表現の機会もごく限られています。

●手話言語条例の策定

 手話言語条例は、都議会の全会派が参画する形でワーキングチームができ、当事者団体や外部の専門家からのヒアリングを重ねながら策定しています。無所属・ひとり会派からも代表が出席し、すべての会派がワーキングチームに参加したことは、大いに評価できることです。漢人は「日本手話」固有の課題や意義を書き込むこと、選挙における手話の保障を盛り込むことなどを提案するなど、積極的に関わっています。