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ブログを更新★【報告】「環境局」事務事業質疑 ―11/7環境・建設委員会

都議会では毎年秋、決算特別委員会による前年度の決算審査と、常任委員会での事務事業質疑(各局所管事業全般についての質疑)を行っています。

環境・建設委員会の事務事業質疑から、漢人の質問と答弁の概要を報告します。
まずは、11/7の「環境局」から (11/14「建設局」も続けて)

録画はこちらです(漢人は3:45:18から)。
https://metro-tokyo.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=856

【1】気候危機対策について
CO2削減目標/2035年削減目標/罰金を伴う規制強化/電気自動車・EV化の促進/エネルギー貧困対策/フロン対策
【2】生物多様性地域戦略 ~推進体制について
【3】神宮外苑再開発 ~イコモスのヘリテージ・アラートについて
【4】PFAS汚染 ~横田基地での新たな漏洩について

【1】気候危機対策について

 11月だというのに夏日が続き、11/3の夏日は観測史上初とのこと。
 今夏は各地で観測史上最高の気温とされ、猛暑、水害、山火事などの気候関連災害が激化し、国内外で多くの命が失われ、温暖化は暴力的な形で地球全体を襲っている。国連グテーレス事務総長は7月、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と訴え、9月には「私たちの気候は、地球のあらゆる場所で起きている異常気象に私たちが対応できる速度を超えて、崩壊しつつある。まだ気候変動による最悪の混乱を避けることはできる。ただし、一刻の猶予もない」と世界に警鐘を鳴らしている。
 10/23、英国南極観測局が「深刻な地球温暖化の進行によって、一番野心的な削減目標の気候シナリオで温室効果ガスの排出を減らし、産業革命以降の気温上昇を1.5度以内に抑えたとしても、今世紀中に南極西岸の棚氷の融解と海面上昇を止めることができないおそれがある」とする衝撃的な論文発表をした。南極では、今年9月に冬の海氷面積が観測史上最小になるなど温暖化の影響が顕著。西南極の棚氷がすべて融解すると、将来的に世界の海面を最大約5メートル上昇させる可能性があると科学者たちは警鐘を鳴らしてきた。
 小池知事は今年もCOP28に行かれるようだが、昨年のように水素エネルギーの活用拡大のみを主張するようなことは止め、今、緊急に求められている取り組みへの対策強化とアピールをメインとすべき。世界の気候対策の足を引っ張り、気候野心サミットでの発言もさせてもらえなかった日本の首都の知事として、国を上回る取り組みへの意欲や姿勢を打ち出すことを強く求める。
 以上の観点から、気候危機対策について質問する。

Q1 IPCCの削減目標に対する姿勢~2030カーボンハーフ以上の削減を
 気候変動に関する政府間パネルIPCCは今年3月の第六次報告書で「2019年比で2030年にCO2の48%削減」を要請したが、この削減目標は「50%の確率で1.5℃目標を実現する」ものであり、五分五分、1.5℃目標を確実に実現するものではなく、途上国も含めた全世界平均の達成すべき目標である。
 先進国の歴史的排出責任など気候正義の立場に立てば、都は、現在の目標・2030カーボンハーフ以上の削減が求められているのではないか。

➡気候変動対策部長答弁
 気候危機への対応は一刻の猶予もなく、2030年までの行動が極めて重要との認識の下、都は、2030年までに都内温室効果ガスを半減する目標を掲示。その実現に向け、施策の抜本的な強化・拡充

Q2 2035年削減目標の策定を
 グテーレス国連事務総長は「地球沸騰化」と警告を訴え「先進国は2040年カーボンゼロをめざすべき」と提言し、国際エネルギー計画・IEAは「先進国は2035年までに2022年比で80%の削減」を求めている。
「2040年カーボンゼロ」の提言をどう受け止めているか。また2035年目標の策定の予定はあるか。

➡気候変動対策部長答弁
〇気候危機は一層深刻化しており、都はエネルギーの大消費地の責務として、世界の脱炭素に貢献していくことが必要
〇今後も世界や日本の動向も踏まえながら的確に対策を講じ、2030年カーボンハーフ、2050年ゼロエミッションを目指していく

Q3 「補助金による誘導」と「罰金を伴う規制強化」で実効性の担保を
 現状では「2030年カーボンハーフ」の実現は厳しく、その大きな要因は、「補助金と公表による誘導」が中心で、規制強化が不十分なためだと思われる。「罰金を伴う規制強化」とセットでの「助成による誘導策」で効果と実効性を

➡気候変動対策部長答弁
 気候変動対策の実施に当たっては、各課題の現状に応じ、補助金等の支援、義務付けや罰則などの規制的手法について、環境審議会等において専門家の意見も伺いながら、総合的な判断から手法を選択

Q4 電気自動車・EV化の促進のため、ガソリン車規制政策を
 都は2030年に、乗用車の新車販売に占めるゼロエミッション・ビークル・ZEV(走行時に二酸化炭素等の排出ガスを出さない電気自動車や燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車)の割合を50%とする目標を掲げている。
 2023年度予算のZEV購入補助金額は2年間で約5万台240億円なので、1台当たり48万円。都の年間の乗用車新車販売台数は約21万台なので、2030年に50%とすると約10万台。同条件として単純計算すれば、補助金の総額は48万×10万台=480億円と膨大な金額になる。膨大な補助金制度だけでなく、ガソリン車規制政策を検討すべき。ヨーロッパでは、都市交通政策として、CO2や大気汚染物質を多く排出する車両の進入を制限するLow Emission Zone:低排出ゾーンが進められ、EV車購入を促進する役割を果たしている。検討しないか。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、自動車を多く使用する事業者に対し、一定割合以上の低公害・低燃費車の導入を義務付ける制度を運用しており、令和4年度からは、乗用車への一定割合の非ガソリン車の導入も義務付け
〇また、自動車メーカーのZEV開発意欲を高めるため、今年度から、メーカーに開発インセンティブを与える取組を導入するなど、補助制度の拡充も図っており、個人からの申請は、本年10月末時点で、昨年度実績の約7割
〇引き続き、こうした取組を通じて、2030年までに都内乗用車新車販売の50%ZEV化を実現

Q5 エネルギー貧困対策の強化を
 気候変動対策のほとんどは、住宅新築や改修など一定所得以上の世帯が健康や経済的な恩恵を受けるもので、福祉保健局と連携したエネルギー貧困の視点は重要。
 23区内における2022年の屋内での熱中症死亡者194人中85%の165人がエアコン不使用。経済的理由でそもそも設置されていないケースが想定されるが、設置していても使用しないケースが過半であり、電気料金の高騰等の経済的事情がある。家電を効率よく利用することなどの周知も有効。
 民生委員などを通じた周知は進展しているか。

➡気候変動対策部長答弁
〇都は、家庭の省エネ行動を促すため、省エネ性能の高い家電等の買換えを推進する「東京ゼロエミポイント事業」や、家電等の省エネとなる使い方の工夫をまとめた省エネ対策リーフレット、家庭の省エネハンドブックを作成し、区市町村をはじめ関係機関に周知
〇福祉局とも連携し、今年の夏に備え、民生・児童委員の区市町村会長が集う会議で、こうした取組を紹介するなど、より幅広い世帯に対し、日常生活で行える省エネとなる工夫の周知

Q6 フロン対策強化の事例と効果
ア)都の温室効果ガスは、2000年比でCO2は削減されているが、フロンは増加しておりフロン対策は重要。2020(令和2)年4月施行の改正フロン排出抑制法では建物解体現場における取り締まりが強化。罰金や逮捕・書類送致を含めた検挙件数、事例と効果
イ)都のフロン削減目標は、2030年までに、2014年の65%削減だが、政府の削減目標は、2013年比で55%削減である。削減率はなぜ政府と異なるのか。

➡環境改善部長 答弁
ア)〇都内でフロン排出抑制法に基づく違反により検挙された事案は2件
〇対象となった違反行為は、建物解体業者や金属買取業者等によるフロンのみだり放出や機器の不適切な処理等
〇両事案とも、フロン排出抑制法改正後、全国で初めて書類送致又は逮捕に至ったこともあり、フロンの不適正処理の防止に向けて効果
イ)国の施策に加えて、都が独自に行う冷凍空調機器の使用時・廃棄時における適正処理の徹底やノンフロン機器の導入促進等、今後の施策や有識者の意見を踏まえて設定


【2】生物多様性地域戦略 ~推進体制について
 今年4月、東京都生物多様性地域戦略が公表された。
 1992年の地球サミットで、同時に署名された「生物多様性条約」「気候変動枠組条約」は双子の条約ともいわれ、気候危機の一層の深刻化と同時進行で、生物多様性の損失が人類の大きな脅威となっている、と地域戦略の冒頭で知事も述べている。
 2010年のCOP10で確認された「愛知ターゲット」20の目標は達成ゼロ。計画や目標は推進体制こそが重要。

 第26期自然環境保全審議会が設置され、7/21に第153回審議会が開催された。「東京都生物多様性地域戦略アクションプランについて」も報告され、アクションプランは、審議会「計画部会」に報告して助言を求め、その後、「庁内の推進会議」において、計画部会の助言を共有して取組を見直し、新規施策等を翌年度のアクションプランに反映していく流れで進捗管理し、毎年度更新していく予定と説明された。

ア)専門委員の追加委嘱を
 地域戦略を策定した「地域戦略改定検討会」は、審議会から、4名の計画部会委員、3名の計画部会臨時委員、5名の専門委員の計12名で構成。ところが、第26期審議会の計画部会は5名の委員と2名の臨時委員の計7名に減り相当脆弱。計画推進にはマルチステークホルダーを構成員とする体制、すなわち、企業や消費者、投資家、労働者、NPOなど、社会の様々な立場にある組織や個人が、プロセスに参加し、学び、協力し、それぞれの役割を果たすことが必須。専門委員を追加委嘱すべき
イ)2024年度のアクションプラン更新に向けた、計画部会と、生物多様性地域戦略庁内推進会議の開催スケジュール

➡自然環境部長答弁
ア)審議会計画部会は、地域で活動している都民委員、生物多様性に関する専門的知見を持つ学識経験者など様々な立場の委員で構成
イ)審議会計画部会、庁内推進会議とも、今後も、必要に応じて開催

【3】神宮外苑再開発について
Q1 国際イコモスのヘリテージ・アラートへの対応
 国際イコモスが発出した「ヘリテージ・アラート(遺産危機警告)」を基に、日本イコモス国内委員会が見解を示すことを希望したことへの回答期限は10/10。都は、都への要請「高層ビルの建築が市民の公園利用の権利を永遠に奪うものであるという事態を鑑みて、神宮外苑再開発に関する都市計画決定を見直し、環境アセスメントの再審を行うこと」に回答していない。

ア)ヘリテージ・アラートは、事業者、都、自治体、国に対し5つを要請。都は事業者、港区、新宿区との連絡調整や意向確認はしたか。
イ)事業者は、イコモスの指摘に対して、イコモスが「貴重な都市の森」と位置づけことに対して「森はわずかしかない」とするなど、「事実とかけ離れている」として反論する見解を示した。都の見解を伺う。
ウ)「環境アセスメントの再審を行うこと」も求められているが、環境影響評価審議会の意見を聞いたか。
エ)回答に関して検討した手続きと回答しなかった理由

➡政策調整担当部長答弁
ア)対応は、事業者や国、関係区それぞれにおいて判断すべきもの。本件事業に関するアセスについては、これまでも条例や答申に従って、適切に手続を進めていると説明
イ)個別の事業については、事業者が責任をもって説明していくべきものであり、事業者には、内容を丁寧に説明するとともに、本事業に対する理解と共感を得られるよう、引き続き努めていただきたいと考える
ウ)アセスについては、条例や答申に従って、適切に手続を進めており、審議会においても、様々な案件と同様、条例に従って適切に手続を進めてきているとの見解
エ)本件事業に関するアセスについては、これまでも条例や答申に従って、適切に手続を進めていると説明

Q2 都の「樹木の保全」要請を受けた手続き
 9/12に都市整備局長と環境局長の連名で行った「神宮外苑地区のまちづくりにおける樹木の保全について」の要請を受けて、事業者は、年末か年明けに樹木の保全に関する具体的な見直し案を盛り込んだ環境影響評価書の変更届を提出すると聞いている。事業者の見直し案を受けた環境影響評価審議会の開催等の手続きの目途を伺う。

➡政策調整担当部長答弁
事業者から図書が提出され次第、内容を踏まえて手続きを進めることになる

【4】PFAS汚染 ~横田基地での新たな漏洩について
 11/3沖縄タイムスが、米軍横田基地で、1/25、26の二日間にわたって、消火用スプリンクラー設備の部品が凍結によって破損し、内部のPFAS汚染水が漏洩したことを報道した。計760リットル、1リットル当たりの濃度は、PFOSが240万ナノグラム、PFOAが32万ナノグラムの計272万ナノグラムで、暫定指針値の5万4400倍。漏洩場所は福生市側の民間地から100メートルしか離れていないとのこと。

ア)本件について、米軍から都への報告はあったか

➡環境改善技術担当部長答弁
米軍から国への報告の有無については国に照会中

イ)スプリンクラー設備の管の中には事故後も推定9500リットルの汚染水が残っており、米軍が排出を試みたが失敗したとのこと。その原因
ウ)事故現場で清掃作業に使われたPFASで汚染された吸収材などはどう処分されたのか。
エ)米軍は7月に過去の漏洩の情報提供をした際、なぜこの事故を公表しなかったのか。

➡環境改善技術担当部長答弁
いずれも国に照会中

オ)米軍に対して基地内に存在するPFAS汚染水の全容の情報提供と対策を求めるべき

➡環境改善技術担当部長答弁
関係局と共に検討中

カ)緊急に福生市の漏洩場所に近い地域の汚染調査を行うべきではないか

➡環境改善技術担当部長答弁
都内全域の地下水の水質調査において、地元自治体と意見交換して地点を選定していく。